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100億円でこの国を救えるか -東のエデン-

自由に使える100億円と、
何でも叶えてくれる優秀なコンシェルジュ。

そのふたつを得る対価は、この国を救うこと

12人で行うセレソンゲームは、最初にゴールした者以外「サポーター」による死がもたらされる。



ノイタミナ初のオリジナルストーリーアニメ『東のエデン』がアマゾンプライムに追加されました。キャラクター原案は『ハチミツとクローバー』や『3月のライオン』でお馴染みの羽海野チカさん。

ホワイトハウスの前で全裸の男性と出会う話、ということしか知らなかったのですが(間違いではない!)大まかに言うと日本社会を良くするためにはどうしたら良いのか、という内容でした。




"迂闊な月曜日"がもたらしたもの

大学の卒業旅行でアメリカに来た森見 咲。
友人たちと別行動でひとりホワイトハウスを訪れます。

ホワイトハウスの噴水に向かって小銭を投げ入れる所を警察に見られていた咲でしたが(咲ちゃん勇気ある…)片手に拳銃、片手に不思議な携帯電話を持った全裸男・滝沢にその場を救われます。


「でね、なんかあるじゃないですか。日本って、もう自分たちじゃどうにも出来ない重たい空気。それをね、少しで良いからなんとかしてくださいってお願いしてみようかな、なんて考えてたんです」


滝沢とともに日本へ帰国することになるのですが、帰国前のアメリカの空港で、咲は日本がミサイル攻撃を受けたことを知ります。


「"迂闊な月曜日"は誰も死ななかったでしょう?」


首相が「迂闊だった」と発言してしまったことによって名付けられた"迂闊な月曜日"は奇跡的に犠牲者がひとりも出なかった10発のミサイル事件。

けれど今回の11発目では犠牲者が出てしまった。


「でも確かに、あんまりにも出来すぎた感じだったから、みんなどこか危機感なくなっちゃって。不謹慎だけど、すこしワクワクしてて。もっと何かすごいことが起こらないかなって思ってた」


誰も死ななかったことにより危機意識が薄れていた国民。
犯人探しのお祭り騒ぎばかりだった国民。
次は何が起こるのかとわくわくしていた国民。

さて、11発目のミサイル、国民の反応は…?



滝沢朗は何者なのか

怪しい全裸の男・滝沢くんですが、自分の記憶がありません
ホワイトハウスは分かるのに、自分のことは思い出せない。不思議な携帯電話(ノブレス携帯)はコンシェルジュであるジュイスと繋がり、ジュイスは滝沢の指示を受けて記憶を消したと語ります。

滝沢くんは、自分は何者で、なぜ記憶を消したのか、記憶を消す前に何をしていたのかを探っていきます。そして探っていく中で自分がセレソンゲームの参加者だと知るのです。

ノブレス携帯を持っているのは全部で12名。彼らはセレソンと呼ばれ、ノブレス携帯に入っている100億円を使用して「日本を正しき方向へ導く」義務を負っています。
義務を果たす前に残金が0円になった場合や途中放棄をした場合、また、義務を果たしたセレソンが現れた場合には、それ以外のセレソンに的確な死がもたらされるのです。

それが、滝沢くんが参加しているセレソンゲーム。


・アジトにある様々な武器、複数のパスポート
・10発のミサイル攻撃「迂闊な月曜日」
・2万人のニート失踪事件


これらのピースがひとつひとつハマっていくと同時に滝沢朗が何者なのかが明かされていく、そんなストーリーなのです。



そしてこの滝沢くん、文句無しに格好良い。

コンシェルジュのジュイスは通話を終える前に毎回「ノブレス・オブリージュ。今夜も救世主たらんことを」と告げるのですが(シチュエーションによって多少言い方は変わります)、それに対する滝沢くんの返答にわたしはすっかりやられたのでした。

どうかな。せめて紳士ではいたいよね

滝沢朗が何者なのか、なぜ記憶を消したのか、が明らかになるにつれてますます滝沢くんのことを好きになっていき、同時にとても哀しくなるのです。

…滝沢くんは、ずっと紳士だったと思うよ。



100億円でこの国を救えるか

さて「100億円で日本を正しき方向へ導け」と言われたら、あなたならどうしますか?自由に使える100億円は多いでしょうか、少ないでしょうか。

そもそも前提としていまの日本は正しくないわけです。
日本の何が正しくないのか。何を正せば良いのか。

政治や裏社会から変えていこうとする者、国民の意識を「被害者」として一纏めにしようとする者、高齢者医療改善を目指す者、正義が貫けなくなる者。

国民という一億人のエゴイスト集団が納得できる正しい日本って一体なんだろう。

10年以上前のアニメなんですが、テクノロジーは発展しても社会の根幹ってそんなに変わっていないんだなあと思ってしまう。『東のエデン』で描かれているのは、2020年のいまの問題でもある。

「不確かな情報や、自分にとって都合の良い噂で、簡単に自分の意見を変えてしまう無責任な大多数…」

最終話で出てくるこの台詞こそまさにSNS社会のいま、突き刺さるんですよね。アニメ内の携帯はガラケーなのに。

この国の”空気”に戦いを挑んだひとりの男の子と、彼を見守った女の子のたった11日間の物語』というキャッチコピーがうまい。

そうだ、これは日本の"空気"に戦いを挑む物語だ。




アニメ全11話を観終えても不明な点が残るんですが、その続きは劇場版2作。ちなみにプライムにあるのはアニメのみです。劇場版まで観ないと完結しないので観るなら劇場版まで観るのがお勧め。



ノブレス・オブリージュ
今夜も救世主たらんことを

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