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友達、だから助けたい【 #SSSS_GRIDMAN 】

たとえば、友達が悪いことをしていたとして。

周りは、次に悪いことをしてきたときにどう対処するかの話ばかり。説得して止めようと言う声は聞いてもらえない。友達相手に争うことなんて考えられないのに。

争わずに説得したいと思うのは友達を信じているからだ。
では、友達を信じる理由ってなんだろう。
今までの積み重ねてきた信頼関係?


…もしこの関係性が、作られていたものだとしたら?



1993年に放送されていた特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』を原作としたアニメ『SSSS.GRIDMAN』を観ました。

そうなんです、このアニメの原作は特撮ドラマ
単にヒーローが怪獣を倒す話、であればこんなにも好きにならなかった。
このアニメはひとりの女の子を救う話です。


※本編のネタバレがあります!



「あの子たち、もう会えないってこと?」

高校生・響裕太が記憶喪失になるところから物語は始まります。
クラスメイトである六花の家のジャンクショップ。そこに置いてある古いパソコンから裕太を呼ぶ声が聴こえてきます。声の相手はハイパーエージェント・グリッドマン。

「思い出してくれ。君の使命を」

裕太の使命はグリッドマンとなり、街に現れた怪獣を倒すこと。

六花、そして同じくクラスメイトの内海とともに『グリッドマン同盟』を結成し無事に怪獣を撃退。しかし翌日、破壊されたはずの学校も、道路も、建物も、そして人々の記憶にも怪獣の痕跡は残っていませんでした。

全て昨日と同じ……だったら、良かった。

「てかさ、変なんだよ。机の数少なくね?」

内海の疑問に六花も気付きます。いつも元気な問川たちの机が無いのです。裕太のお昼ごはんのパンにボールを当てて潰したのは昨日のこと。教室でボール遊びをするなって怒られていた問川は。

「問川とかの机無い気がするんだけど、」
「問川?誰それ?」
「誰って…だから、バレー部の…」
「うちのクラス、バレー部なんていないじゃん」

怪獣の被害に遭った街や建物は元通り。
怪獣を目にした人々の記憶もリセットされている。

だけど、怪獣の被害に遭った人も、みんなの記憶から消えている


内海や裕太は怪獣についての話し合いを続けます。
次に現れたらどうやって倒すのか。
そもそもどうして街に怪獣が現れるのか。

一方、六花はなかなか前に進めません。

たとえ同じグループの仲良しの友達じゃなくても、裕太や内海以外のクラスメイトが忘れてしまっても、いなくなってしまったという事実を六花は覚えているわけです。忘れることは出来ないのです。


「私がそう設定したんだから」

怪獣は何故かこの街だけに現れ、被害を受けるのも裕太の周りの人たちばかり。いったいどこから怪獣は産まれるのか。

その答えは1人のクラスメイトにたどり着きます。
それが裕太の隣の席でクラスの人気者、新条アカネ

嫌なことがあったら怪獣を作れば良い。
気に入らないひとは消しちゃえば良い。
消して、新しく世界を作り直せば良い。

アカネがこの世界を作る神様だったのです。

クラスメイトの問川がいなくなったのも、アカネの指示。

「私の怪獣にお願いして消してもらったよ」
「なんで…あのひと新条さんに何かした?」
「スペシャルドッグ!響くんにあげたパン、あの子たちさぁ、潰しちゃったじゃん。いやーほんっとないわーって思って」

あの日、裕太の潰されたパンはアカネが譲ったものでした。問川は教室でボール遊びをして、そのパンを潰した。
たったそれだけのことで、アカネは問川を消してしまったのです。


六花はアカネを説得しようと試みますが、そこである事実が判明します。

「私が何をしても六花は私のことを嫌いになれないよ。私が六花をそう設定したんだから
「ここに住む人は、みんな私のことを好きになるようになってる。だから私と六花は友達なんだよ」


友達 「だから」 助けたい

『SSSS.GRIDMAN』は裕太、内海、六花が協力してグリッドマンと共に怪獣を倒す話、ではなく、みんなで新条アカネを救い出す話です。

いつだって六花は人一倍、周りの人のことを想っていた。
仲良くも悪くもないクラスメイトの問川がいなくなったとき、誰よりも胸を痛めていた。たいして楽しくない合コンの相手が狙われているって気付いた時には命懸けで守ろうとした。よく知りもしない少年にご飯を譲り、家のシャワーを貸した。アカネがICカードをそのまま使っているのを見て、定期入れをプレゼントしようとしていた。

そんな六花が、アカネから創り出された存在だと聞かされてどうしたか。


六花は、アカネのことを友達だと言い切ります。

「私はアカネを友達だと思ってる」
「だからそれは、私が六花をそう設定しただけなんだって!友達だって思い込んでるだけなんだよ!」
「私はアカネの友達。私はそれ以外に産まれてきた意味なんていらないよ。アカネは私のこと、どう思ってるの?」


この物語の主人公はグリッドマンに変身して怪獣を倒す裕太ではなく、六花の方なんじゃないのかなとわたしは思います。

いつだってアカネと向き合い続けて、話をして、アカネの重く閉ざされた心の扉を何度も優しくノックし続けたのは間違いなく六花でした。

どうして六花にそれが出来たのか。
それは、やっぱり六花がアカネの友達だから。

たとえそう設定されたのだとしても。創られたのだとしても。
六花がアカネの友達であることに変わりはないのです。
友達が苦しんでいるのなら、助け出したい。それだけ。

自分の理想とする世界を創って、壊して、また創って。みんなが自分のことを好きで。だけどそうやってプログラムしたはずなのに、アカネのことを放っておいてくれない、アカネの思い通りにならないのが六花だった。

悪いことをした時にちゃんと叱ってくれる人。ちゃんと止めてくれる人。そういう友達の存在って本当に大事だ。止めてくれた時に素直に聞くことが出来るのかも。

友達の想いを受け取ったアカネの一歩は、とても大きな一歩だった。


そうそう1話で六花が鼻歌で歌っていたのが合唱曲の『Believe』でした。
そっか、この物語にぴったりな曲だったんだね。


昨日(2021年4月2日)から新作『SSSS.DYNAZENON』が始まりました。

相変わらずTRIGGER作品の女の子キャラはかわいいし、何気ない会話のやり取りや高校生らしい言動に笑っちゃうシーンも多く、今後が楽しみです。変身には4人必要(?)っていうのも面白い。取り込まれる(乗る、よりそんなニュアンスの方が近い気がする)人によって戦い方も違ってくるのかな。

それにしたって榎木淳弥の最近の活躍、すごいよね。



榎木淳弥 × TRIGGERの別の作品についてはこちらも。
(宇宙パトロールルル子)


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