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孤独Ⅱ すべてのみこむ(詩)

月刊詩誌「ココア共和国」2020年6月 傑作 書籍掲載


何あれうざかったよね 自分のことばっかり よく語るよね けどそういうあなたたちも日々をかしゃかしゃ切り取って華やかに修正して毎日載せるよね 世界に発信 一緒じゃないの? そんな言葉はワインで呑み込む きっとさみしい人なんだよ 代わりにそう言う 必死で己を語る人を見ると そのさみしさが痛いほど心に刺さるから ああ、そんなに一生懸命語っても伝わりはしないのに あなたの大切なものは何一つ他の誰かの大切なものにはならないのに あなたの中にひっそりとしまっておくべきなのに 奥の方にいれて しっかりと鍵をかけて 一人の時にそっと取り出し 慈しみ 恍惚とし 癒やされ 救われる それでいいのに わかってもらおうなんて 自分が何を大切に思うか 何を素敵に思うか 何を正義と思うか 何が生きる理由か わかってもらおうなんて そう思うことが孤独を生み さみしさを生むのに だから私は何も言わずにワインを呑む いつだって大切なことは全て呑み込む そして飲み過ぎる それでいい 誰かにわかってほしいなんて思うより余程いい 全て呑み込んで気持ち悪くなって 吐き出すなら全て 真白く冷たい便器の中へ 痛々しいほど孤独な男を散々笑う女たちは 流行のおしゃれをし みんなが好きな音楽や映画や芸人の話をし 一緒に嘲り笑える対象を探してる そうやって誰かと繋がるために ビバ絆! それが本当にあなたたちのやりたいことですか? 心の中で問いかけて気づく なんだ 私も同じか バイバイと笑って別れて一人になれば 写真に撮ったりしない 誰にも見せない 自分だけの大切なものを そっと取り出し 慈しみ 恍惚とし 癒やされ 救われる そして明日になればまた 流行のおしゃれで武装して出かける みながいいねと言ってくれる素敵なものだけを 上手に切り取り世界に発信する そうやって 大切なことはすべて吞み込み 誰にも見せず がちがちに守り固めているくせに 結局は求めてる 信じてなどいない 言葉にもできない まるで幻みたいなものを この試練を乗り越えれば? 次の角を曲がったら? なんて今日も愚かな期待 そんなひそやかな 秘めた想いも すべてのみこむ

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