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「今あるものに愛着を持つこと」と、「いつもの風景を違う見方で捉えること」についての学び。

「今あるものに愛着を持つこと」

少ししんどい過去を思い出したときとか、気持ちを落ち着けたいときに、ミニマリストの本や映像に触れることがある。人生の転機に、家にある大量の使わないものを処分して、物欲と向き合って、本当に自分にとって大事なものだけを身の回りにおくことを選んだ人の生活を見ると、いつも心が整う。

たいてい映像を見たり、本を読んだあとで、自分も部屋やクローゼットを整理したり、いらなくなったものを少し処分したりする。

そして同時に、今持っているものを、長く使い続けられていることを嬉しく思う。たとえば、高校のときから10年以上使っている筆箱と弁当箱、通勤に使っている、7年前友達に譲ってもらったクロスバイク、もうすぐ買ってから5年になるスマートフォン、語学の勉強に今も使っている、塗装がはがれたウォークマン。

どんどん変わっていく社会で、新しい商品が生まれていく中で、何年も前のものを使い続ける、変わらずに同じものから恩恵を受ける安心感。意識を向けて、改めて感じるたびに、また愛着がわく。新しいものを買うことは、お金さえあれば簡単にできてしまうけれど、何年も同じものを使い続けることは、すぐにはできない。スマホは古くなって、起動が遅くなったりして不便だけど、新しいものを買いたい気持ちと愛着のあるものを使いたい気持ちを天秤にかけたら、今のところまだ後者の方が大きい。



欲望との距離感を楽しむ。

ミニマリストの人たちは、買いたいと思ったものをすぐには買わない。自分の欲を、少し客観的に捉えてみる。

食べ物でもそれができたらいい。何かを食べたくなっても、あえてちょっと我慢してみて、空腹の時間を持って胃をすっきりさせてみる。それができるようになったら、気持ちにも余裕ができる。食べたいときに、食べようと思えば食べれるからこそ、あえて空腹にしてみて、サウナや水風呂に耐えるように、その時間を耐えることを楽しんでみる。忙しかったり、気持ちに余裕がなかったりするとなかなか難しくて、あまりできないのだけど、できた日は気持ちがいい。


「いつもの風景を違う見方で捉えること」

職場で毎年一回、年度末あたりに、新人発表・実践研究発表というのがあって、働いて1年になろうとする若手社員が1年の仕事を通した学びを他の社員に向けてプレゼンする。同じ日に、新人じゃなくても、誰かから推薦されたり、発表したいことがある人は、同じように発表する。テーマは、自由。

それが毎回おもしろくて、盛り上がる。福祉の現場の普段のミーティングで、利用者さんたちの話はたくさんするけれど、スタッフひとりひとりがどんなことを日々考えながら働いているのかを聞く機会はなかなかない。仲のいい人とたまに仕事に関する話を深く長くすることはあっても、会話だと相手に合わせたり、共通の関心のあるひとつのトピックについての意見交換になってしまうから、その人自身が、普段語らない仕事のなかで、どんなことに特に関心を持って、何を考えて行動しているのかを発表を通して知るのは、とても興味深い。

アートをしている法人だから、「音」や「絵画」、「ダンス」などに詳しいスタッフがいる。それぞれの視点で見た、考えた現場の話をしてくれる。福祉系のことを勉強してきた人でも、専門はそれぞれ違うし、学問的な専門性でなくても、仕事を通して培ったその人独自の見方、考えたことを話してくれるのは、とてもおもしろい。


今年は遠隔で見たのだけど、あるスタッフの発表のなかに、「今、周りにある音を丁寧に聞いてみるワークショップ」についての話があった。人によって、どの音が大きく聞こえるか、どの音が近くに、あるいは遠くにあるように聞こえるかは、実は違う。何に関心があるかが、外界の情報の受け取り方にもかかわってくる。

普段は生活にとって意味のある音にばかり注目しがちだが、そうでない音に注目してみると新しい気づきがある。サウンドスケープという考え方の紹介もおもしろかった。


別のスタッフは、左から右に引かれた一本の線をどう捉えるか、という話からプレゼンをはじめていた。一本の線の解釈の仕方も、実は何通りもあった。


何気ない日常、たとえば自転車で職場に向かうときの、いつもの通勤路。車の多い通りをずっと進んで、お寺の前の道に入り、駅の近くの踏切を通って、ゆるい上り坂と下り坂をいくつか越えて、職場にたどり着く。

その間に、普段気に止めていなかった音を聞くこともできれば、道端の植物の変化に注目することもできるし、交通量の変化から何かを想像することも、自分の体に意識を向けて、体調の機微を感じることだってできる。もちろん、職場のことや、今日これから始まる仕事のこと、最近はまっている漫画や映画のことを考えてもいい。

何気ない日常に、新しい視点を持ち込む。何も新しいことをはじめなくても、視点を変えるだけで、仕事でも私生活でも、新しい楽しみ方ができる。そんな学びを、少しスローな日々のなかで、時々取り入れて生きたいなと思う。




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