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知らない街をひとりで散歩する。


仕事やプライベートが同時に、少しずつ、忙しくなってきている。予定のない休日がしばらくないのだけれど、そういうときこそ現実逃避でひとりでどこかへ行きたくなる。

宿直明けで、昼には予定もあったのだけれど、そのあと行ったことのない場所を訪れたいと思っていた。

こんなとき、アート活動をしている福祉施設、「たんぽぽの家」で働いているととても良い。スタッフ向けのメールで、利用者さんの書道の展示が神戸で今日行われていることを知り、ひとりで訪れてみることにした。

原田の森ギャラリーというところらしい。

阪神電車の最寄りの岩屋駅は、三宮の近くだけれど、まだ降りたことのない駅だ。

小さい頃から散歩やサイクリングで知らない場所に行くのが好きだった。

大学生の頃には、今降りなければ今後の人生で決して降りることがないような、何の目的もない駅であえて降りて、その駅の周りを散歩するということを時々するくらいだったのだけれど、いったい自分は何をしているのだろうとちょっぴりむなしい気持ちになることもしばしばだった。

少し遠出をするのなら、何か小さくてもいいから目的があるといい。

普段かかわっている利用者さんの書道の展示を見に行くことを口実に、自宅のある新大宮から電車で岩屋駅へ向かう。

最近久しぶりに連絡をくれた友人が書く飯テロ系のnoteを読んでいたらおもしろくて乗り過ごしてしまい、一駅先の春日野道駅で降りることになる。

まあいいや、この駅もまだ降りたことがない。

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ラッキーなことに、近くに商店街がある駅だった。せっかくなので通ってギャラリーまで行くことにする。

不運なことにお腹が少し痛かったので結局何も買わなかったのだけど、おいしそうなコロッケや酒まんじゅうなど、いろんなお店が並んでいて楽しい商店街だった。

僕は人混みは苦手だけど、それほど人が多くない商店街は好きだ。ふらふら歩いているだけで、食欲とか購買欲とか、いろんな欲をかきたてられて楽しい気持ちになるのが良い。そういえば最近仕事で行った天理駅前の本通り商店街も、昔ながらの店が多くてのんびりしていて落ち着く感じが良かったな。

商店街を抜けて右折し、JRの高架下に店が並ぶ道を東にひと駅分歩いて引き返し、王子公園のすぐ近くにあるギャラリーに着く。

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事前に写真でも見ていたけれど、立派な建物だった。中に入って左手にある広い展示スペースに進む。普段よく関わる利用者さんの作品は迫力があって驚いた。生活の支援をさせてもらっている彼が書道をしているところを、僕はまだ見たことがない。仕事の合間に今度、書いているところを見せてもらおうと思い、他の方の作品も見てからギャラリーを出る。


そして散歩が始まる。

せっかくなので高台に登って神戸の海を見下ろしてみよう。
時間にはわりと余裕があった。google mapは使わずに、適当に歩いてみることにする。

海と山が近く、いろんな時代に栄えた歴史もある神戸の街並みはどこを切り取っても個性的でおもしろい。初めて歩く王子公園周りのランニングコースには、ざくろの実がなっていた。

ずいぶん登ったところに唐突に立派な神社が現れ、なんだか強引な感じが否めない標語が掲示板に貼られている。


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時々高級車が通る住宅街まで来ると、海が遠くに見えていた。高級住宅街でも手ぶらで散歩できるのはなんだかありがたいことだと思う。これがどこか違う国だったら、誰かに何か言われる気がしなくもない。


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城の下通という町に現れた長い壁。これはなんだったんだろう。



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偶然見つけた神戸高校の立派な建物に驚き、夕焼け空を眺めながら坂を下って、原田の森ギャラリーに戻る。ロッカーに預けていた荷物をとり、休憩がてら、もう4年以上使っているスマートフォンでnoteを書いてから、暗くなった道を歩いて三宮へ向かう。

用事ついでにふらっとひとり、知らない街を散歩する。ポケモンのゲームで初めての町に行くようなワクワク感をリアルで味わえるのと同時に、リフレッシュできる至福の時間だ。

こういうことをしているときに、それができない、身体に障害のある利用者さんのことが頭に浮かぶ。野外での移動にヘルパーの介助が必要な方は、事前に予定をしておかないと散歩は難しい。

昔はどうだったか知らないけど、年上の彼から、自分の体が不自由なことに対する不満や、自由に歩ける僕のような人間に対する羨望の言葉を聞いたことがない。

自分の生活のなかに楽しみを見いだして日々明るく暮らす彼のことを尊く思い、また明日彼と会ったら、ふざけたことを言って笑わせようと思いながら、遅れそうな待ち合わせに向かって早足で歩く。




たまには遠くを眺めてぼーっとしようね。