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成長できないアラフィフの備忘録 https://sizu.me/komorebidayori ふだんはこちらで書き散らかしています。たまにnote

最近の記事

リメンバー・ミーの旅

夫の母の故郷を訪ねた。 夫の母を、ここでは母と呼びます。夫の両親は田舎で見合いをし結婚したが、仕事の都合ですぐにこちらに越して50年以上。夫の父のお墓もこちらで新たに立てているから普段のお墓参りは夫の父を参るだけ。私が夫と結婚して25年になるが、田舎のご先祖のお墓参りは3回目。 1回目は20年以上前。長女がまだ赤ちゃんのときだった。夫のおじいちゃん(母の父。ここでは、『文さん』と呼びます)の100歳のお祝いに参加したのだ。長女にとって文さんはひいおじいちゃん。会ったのはそ

    • 『翼の翼』著:朝比奈あすか(光文社)

      「成績が振るわず医者になれないなら人を殺して切腹しようと思った」 令和4年1月15日、大学入学共通テストの会場である東京大学前の歩道で、受験生を含む三人に刃先を向けた高2少年は、犯行後こう話したという。愛知県下随一の進学校に通っていた彼は、入学した当初から「東大の理IIIに入る」と公言し、両親も困惑するほど「東大」に執着していたと雑誌記事で読んだ。 (太字は評者による) 無論、表に出る情報だけでわかることなど限られるし、編まれたものもあり、真実は定かではない。しかし、彼の

      • 『カミサマはそういない』著:深緑野分(集英社)

        自分の背丈ほどの大きなカタツムリが背中の殻をぐるぐると回転させながらゆっくり、じりじりと自分に迫ってくる。 殻に浮かぶ凹凸が人の顔のようになり、笑っているようでも怒っているようでもあった。私は怖くて泣きながら母を探した。お母さん、お母さん… やっと見つけた。 母のもとにかけよったその途端、母の姿は真っ黒な一羽のカラスとなり、私を見捨てるかのように飛び立った。私は声にもならぬ声をあげ、立ち尽くした。そこで目が覚めた。悪い夢だ。 当時、七歳くらいだったから夢の記憶は多少誇張され

        • 『ここはとても速い川』著:井戸川 射子(講談社)

          文字を読むとき、脳内で声を出して読む人と、そうでない人がいるという。私は前者(というか最近まで皆そうだと思っていた)である。語り手の小学五年、集の声は、最初ぼそぼそとささやくような声で再生された。私にとってなじみのない関西弁。よどみなく続く語りは彼の親友、ひじりの話も時に入り交じり、聞き返す、もとい読み返す場面もあった。きっと彼はきょろきょろとよく動く瞳を持っているのだろう。 視点は、施設の先生たち、特にひじりにセクハラめいた話をする妊婦正木や、入れ替わる実習生、近所のアパ

        リメンバー・ミーの旅

          まごのての出番

          大学生、社会人として子どもふたりが家を出てから約1年。夫婦二人の生活にもだいぶ慣れてきた。子たちは必要なときは連絡してくるが、本当に用件だけ。このあいだは「あさイチに東京スカパラダイスオーケストラが出ている!録画しといてほしい」というLINEが唐突に来た。というわけで!? たぶん仲が悪いことはない。「たよりがないのはよいたより」と思っている。 今年のGWは二人とも帰省してこないそう。そっか。上の子と下の子の帰省スケジュールが合わず、もう1年、家族4人そろっていないことに気付

          まごのての出番

          『地球にちりばめられて』著:多和田葉子(講談社)

          この話は何語で書かれているのだっけ? と何度も反芻した。 いや、まぎれもなくすべて日本語なのだが、デンマーク語、ドイツ語、英語、フランス語…といった多言語がまさにここでも「ちりばめられ」て、脳内で忙しく翻訳しながら読まねばならない本である。それが面倒ではない、なんとも不思議な読書体験だ。さらには 「言語は人間を幸せにしてくれるし、死の向こう側を見せてくれる。」 こんなセリフが空気のように飛び出す世界。主人公Hirukoは、留学中になんと自分の国が消えてしまい、帰る家を失

          『地球にちりばめられて』著:多和田葉子(講談社)

          10年越しの「いいね」

          「行ってみたい場所」 それはお金や時間の問題というよりは、ちょっとの勇気やきっかけ。いきおいみたいなものがあれば行ける場所。たとえばよく前を通るけれど、入る勇気がないお店とか。「いつか」を後回しにしてるもの。私はそんなモノゴトがとても多い。 人生も後半戦、コロナカも経験した。思い立ったが吉日を大事にしよう、と今年は北陸や四国へプチ旅もしたけれど、それよりもっと前から、とある場所に行ってみたかった。というか会ってみたかった人がいた。 私が今の仕事を一人で始めたのとだいたい

          10年越しの「いいね」