『カミサマはそういない』著:深緑野分(集英社)
自分の背丈ほどの大きなカタツムリが背中の殻をぐるぐると回転させながらゆっくり、じりじりと自分に迫ってくる。
殻に浮かぶ凹凸が人の顔のようになり、笑っているようでも怒っているようでもあった。私は怖くて泣きながら母を探した。お母さん、お母さん…
やっと見つけた。
母のもとにかけよったその途端、母の姿は真っ黒な一羽のカラスとなり、私を見捨てるかのように飛び立った。私は声にもならぬ声をあげ、立ち尽くした。そこで目が覚めた。悪い夢だ。
当時、七歳くらいだったから夢の記憶は多少誇張され