魂とはなに?誰がつくったの?古文書『富士信導記』解読①
明治10年発行のこの古文書は、明朝体と変体仮名のミックスで構成されており、「神とはなにか、なぜ富士に登るのか」といった壮大な内容のQ&Aになっています。
確かに富士講(富士山信仰の参拝)の話ではあるのですが、そこに至るまでのそもそも論「神様とはなにか、なぜ人は生まれたのか」というテーマの、古事記と同じ趣旨のものと思っていただけたら間違いないかと思います。
ちょっと重い内容ですが、こうした知識は現代人に不足しているものですし、知っておかなければいけない教養だとも個人的には思っていますので、一度取り上げてみたいテーマでした。
一問あたりの分量は簡潔にまとめられていますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
■毎日お祈りする太陽や月よりほかに貴い神様はいますか
藤原武邦尊師(藤原角行=江戸時代に富士講を
結成した人々が信仰上の開祖として崇拝した人)
から伝来された御身抜(掛け軸)や、
元祖伊藤尊師(伊藤身禄=富士講の指導者)の
一字不説の巻に記載されている天祖天神です。
■天祖天神とはどんな神様ですか
天御中主神(天地開闢の時に最初に現れた
神)です。
■なぜ天祖天神というのですか
天地を創造されて八百万の神を生み、
その他草木などに至るまで
その御徳をもって作り出され、
さらに人に魂をお与えになった神様ですし、
一字不説の巻に、天照大御神も
木花之佐久夜毘売命も、川の鱗に至るまで
みなことごとく天祖天神の御子だとあります。
ですからこれをしっかり理解しましょう。
■人のすべての元祖は誰ですか
大元は神も人もみな天祖天神です。
■人をこの世に生み出したのは誰ですか
言いかえれば、人の魂をお与えになったのは、
天祖天神です。
■人の魂をお与えになった大元はどちらですか
天祖天神のいらっしゃる究極の安楽、
天の都です。
■天の都とはどこですか
国土の天上です。
■究極安楽の天の都からお与えいただいたのでしたら、人の魂もそこにあるときは安楽を得ることができるのですか
酒を好む人が酔ったときのように悪事を忘れ
天の都にいれば、究極の安楽を得ることが
できるでしょう。
■魂が楽しいと感じるのなら、肉体のように魂に形はあるのですか
形はありますが、目で見ることはできません。
■天の都から与えられた魂なら、その大元の天の都に還っていくのですか
この世で生きているうちに善事をすれば、
元の世界に還って究極の安楽を得ることが
できるでしょう。しかし、悪事をはたらけば
戻ることはできず、最後黄泉の国に墜ちます。
黄泉の国とは俗にいう地獄のことです。
【たまむしのあとがき】
内容が内容だけに、間違った訳をしてはいけないと思い、古事記と照らし合わせながら臨みました。
江戸時代にはこのような「教え」「手引き」といった類の古文書が多くあります。
この『富士信導記』は男女問わず大人向けのもので、富士講をするにあたって十分な心構えが必要ですから、まずはきっちりこれを読んで学習してください、という意図のもとで作られたように感じます。
安易な気持ちで富士山には登ってはいけない、富士山を敬いなさいということでしょう。
「富士山は見るもの」派の私たまむしでした。