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難産にならない方法。古文書『廣益秘事大全』解読㉗

嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』解読第27回目。

今回からは第2部「即効妙薬類」に入ります。

病気や怪我を治す方法、薬の処方の仕方など、さまざまな身体のケアに関する秘伝を集めた部になります。

その中で、出産についての記述が多く、まずは出産シリーズ第1弾として、難産にならない方法のみをご紹介します。(単純に原文が長いため)

江戸時代、出産について一般的にどのような認識でいたのかを覗いてみましょう。

難産にならない方法

女性が子を産むのは天地自然の常道ですから、
養生の仕方を知れば、決して難産には
ならないのは、ごもっともなことでしょう。

ですから今これを薬の部に入れるべきでは
ないかもしれないのですが、世間でたまたま
難産の人がいましたし、医者でもまた出産に
ついて論じていることもありますから、
ここではその心得を2つ3つほど書き記す
ことにして、医者の少ない地方の民家の
一助になれば幸いに思います。

一般に難産となるのは、さまざまな難産の様子
から推測すると、産婦みずから用心していても
もし慌てたときに父母夫などが一大事だと思い、
さまざまな手立てをして、むしろ産婦を
非常事態だと恐怖に陥れる場合がひとつ。

もうひとつは、お産のときに看病で付き添う人
もしくは取り上げた老婆などの不手際で、
難産に至る場合が多いというものです。

しっかり心得ておき、決して驚いては
いけませんし、驚かせてもいけません。

懐妊した直後から、少しも恐怖や不安を
心に掛けず、ふだんからすべきことをして
身体を動かし、心を平穏にして臨月を
迎えるとよいのです。

たとえ1・2か月延びても気にせず、
自然に任せて放っておきましょう。

こうしていれば決して難産には
ならないものです。

その証拠に、犬・猫・ニワトリ・ネズミ
などが難産で死ぬことがないのは、
無知のため死を恐れずただ自然に任せて、
気づかいなどしないからでしょう。

しかしながら身も心も好き勝手にして
食べてはいけないものを食べ、
度を越えた力仕事をし、手の届かぬものを
不安定な姿勢で無理矢理取るなどというのは、
わざと難産にしようとしているような
ものですから、一番慎まなければいけません。

特に、懐妊後の夫婦の性交は固く戒めるべき
でしょう。5か月を過ぎればなおさらです。

もしこれに反すれば、
難産となるのは10のうち7・8です。

そのうえ、懐妊を病気のように考えて
養生といっては身体を動かさず、何もしないで
だらだら過ごしていると、食べ物が消化されず、
また何でもないのに薬を求めて飲んでしまうと
母体に悪影響となり、かえって病気を
引き起こすことにもなります。

ですから、薬は病気が悪化しない限り、
決して飲んではいけないのです。

このようにしていれば、世にいう難産という
ものは避けられるものだということを、
しっかり覚えておくべきでしょう。


【たまむしのあとがき】

至極真っ当な内容ですね。

平常心が大事。

う~ん。そうかも。

これは妊娠・難産に関わらず、人生いつでもそうですね。

これを犬・猫・ニワトリ・ネズミと一緒にするのはどうかという気もしますが、やっぱり人間は考えすぎなんですよ。

流されるままに自然で、というのがなかなか人間はできないんですよね。

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