限界百合小説(仮)

「私も、そろそろ働かなきゃなって、思うんだよね。」

「なんで?無理しなくていいよ。ゆりのペースで、焦らずやっていこ?今だってなんとかなってるし、ゆっくりで大丈夫だよ。」

 私は咄嗟にそう言ってたしなめた。ゆりがそんなことを言い出したのは初めてだった。今だって、洗濯物も上手く畳めないのに。お薬何錠飲んでるの?毎日何時に起きてるの?知らない人が怖いって、言ってたじゃん。大人の人の、見定めるような視線が気持ち悪いって。私といる時だけ、素直に喋れる気がするって。働き始めたらさ、私と一緒の時間より、嫌いな上司と顔を合わせてる時間の方が長くなるんだよ。

「だって、いつまでも頼りきりじゃ、悪いなって…」

「いつか愛想を尽かされちゃうんじゃないかと思うと、怖くって…」

劣等感で縮こまる姿が好きだった。ゆりは私がいなきゃ駄目なんだ、私が居ないと、夕方まで寝ちゃうんだから。どうしてこんなに駄目なんだろうって、泣き言を漏らすあなたの睫毛の揺らぎや、喉元の震えが愛おしかった。

「違う、違うよゆり。私はそのままのゆりが好き。嫌いになんてならないよ。」

ゆりが頑張っちゃったら、自立しちゃったら、私は何をしてあげられる?大丈夫になんてならないで。私がなんとかしてあげる。

「今日はハンバーグにしよっか。ゆりは好きなことしてていいよ。」
私がそう言うとゆりは求人サイトがいっぱい開かれたスマホを弄り出した。

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