心象(2022/06/01)

黄緑色の小道を、弱々しい足取りで滑るようにして辿ってきた。海綿のような雲が、共喰いをするようにくっついてはあふれて千切れる。喉で歌うような潮風が、微かにここまで漂ってくる。

冷たい海に流れ出す鯨油、死骸はやがて大らかな家となるだろう。一部始終を伝える手紙が、恋人の予感のように美しい。

逆光の中の子供たちが、いま葡萄酒をこぼしたところで、鬣を引きずる男が、流氷のように歩いている。あなたは私に時間を差し出し、それを惜しげもなく塗り潰した。2年間切れたままの電球が、ひとつの暗い部屋を所有して安らいでいる。

やがて青空へと変わる絞殺魔の午後のくつろぎ、弓なりの姿勢で呼吸する腹、ミノタウロスの頭部、それらすべてに共通する色調を、いま探している。

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