サウダーヂ

久しぶりに会った母と
下北沢のレトロ雑貨屋に入ったら
昭和の歌謡曲が流れていて
母は涙ぐんだ
 
植物の甘い匂いで夏に気付くとき
幼い頃行ったプールのラムネ売りがよぎって
あのおじいさんはもう存命ではないであろう
瓶のビー玉がどうしても取り出せなかった
 
母と折り合いをつけられないことも
プールが冷たすぎておなかを壊したことも
あんな時代のことですら
ALWAYS三丁目の夕日になっちまう
 
ブラジルサウダーヂというコーヒーを飲んだ
あまりに美味しくて
いま、ここにしか自分が居ないということを
忘れてしまったほどだった
そして
長年使っていた林檎の柄のマグカップが
引越しのどさくさで行方がわからないけれど
きっとまだ何処かにあるはずなのだと
今度一緒に探してほしいと熱弁した

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