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小説 まとめ

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自作の小説をまとめました。ほとんどは2分で読める短編です。
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#ショートショート

辺境の惑星

(な、何だこれは……)  ビリーは黄金のビリケン像を眺めて唖然としていた。 なぜなら、少し…

4

未来の生、永遠の死

「先生、私たちは生まれ変わったの。この新しい世界で、面白可笑しく生きていきましょうよ」 …

8

花火と観覧車

 花火は嫌いだ。花火に限らず、夏のイベントには、なるべく関わりたくない。理由は私の二大ス…

19

Open

 ユニコーンは待っていた。  深く暗い海の底で、遠い潮騒と、己の鼓動の音を聴きながら。  …

13

Message

 ふふっ……クスクス……。 “ 笑ってる。小さな女の子……由奈(ゆな)? “  江里(えり)は…

12

すきま

 めったに外泊しない奥さんが、郷里の同窓会とかで、今夜はお留守。家にはあなたと私、それに…

20

熟成

 去年の12月に良枝が風邪を引いたとき、40年連れ添った夫はこう言った。 「普段から体を鍛えてへんからや。情けない。俺なんか仕事で気ぃ張ってるし、ここ20年以上、寝込んだこともないわ」  腹の立つ物言いだが、確かにその通りだった。  良枝たち夫婦は、東大阪の小さな町工場を切り盛りし、息つく暇もなく3人の子供を育て上げた。上の娘2人を相次いで嫁に出したのは5年前。末の息子は専門学校を出て企業で働いていたが、3年前に家業を継ぐと言って、お嫁さんを連れて帰って来てくれた。おかげで

赤いキツネと緑のタヌキ

 赤いキツネは考えていた。  暗い。ここはひどく暗い。見上げても星さえ見えない……。  で…

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メリークリスマス  〜全ての魂に安らぎあれ〜

 11月下旬。冷えて澄み切った街の夜空に、クリスマスのイルミネーションが華やかな彩りを添え…

6

猫ちがい

「近頃の若い者(もん)は」とか口にすると、それだけで年寄り扱いされるから、言いたくはないん…

9

月夜の火鉢

真夜中の公園から、香ばしい匂いが漂ってきた。 餅だ! 間違いない。正月によく食べる、白く…

6

夢見るロボット

 吾輩はロボットである。名前はまだない。出荷前だからだ。倉庫にずらりと並んだ同型のロボッ…

6

夢の国の木馬

 そこは、子供なら誰もが憧れる夢の国でした。広い敷地に様々な遊具や乗り物がそろい、立派な…

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鎮魂ピクニック

 家の中の重苦しい空気をよそに、窓の外には爽やかな秋空が広がっている。紗理奈(さりな)は突然、気晴らしを思いついた。 「ターボ、ピクニックって知ってる? こういう気持ちのいいお天気の日は、外でご飯を食べると美味しいのよ」  身長1mの人型ロボットは、返事をしなかった。AI(人工頭脳)に激しく電気信号が行き交っているのか、目の表情を映すディスプレイが、めまぐるしく点滅している。紗理奈はハッとして、ターボを見守った。  西暦2035年。24年前に起こった震災と、同じ規模の地