思い思われ捨て捨てられ

駅からの帰り道。ママチャリに跨った女性が路地裏で電話をしながら怒っていた。
「もうええから。わかったから。先帰るから」
そう言って自転車を方向転換し、走り出す。
キャップからはみ出た金髪が乾いている。

暫くして、私の横を金髪を1つに結んだ小さな女の子が自転車で通り過ぎた。自転車はどんどんスピードを上げる。
冷たくされても追いかけてしまうのね。
今、泣きそうになっているかもしれない。

先日、母と電話で話した時のこと。
「最近、よう忘れるわ。去年のこともそうだったっけ?て言ってしまう」という母の発言に対し、「ボケたら山に捨てるよ」と返した私。
子供の頃、なかなか寝ない私と姉に「言うこと聞かへんかったら、山姥が来るでよ」と母は脅した。
その脅された娘が今度は逆に母へ言っている。
母は一瞬言い留まり、「捨てて」と答えた。

今日見た母と娘も、数十年後には逆になっているかもしれない。

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