あれもこれも、ぜんぶキャロットケーキ
ひょんなことから私の中でキャロットケーキがひそかなブームになっている。
きっかけは色鮮やかな一冊の本。
蔦屋書店の料理に関する棚で一際目立つオレンジ色をしていたその本が目にとまった。
タイトルは
『まいにち食べたいキャロットケーキ』
タイトルにもなんだかそそられた。
パラパラと中を見てみると、キャロットケーキのレシピがいくつも載っている。
おいしそう!作ってみたい!
という衝動に駆られた。
その週末は何かしらのパンを捏ねようかなぁとぼんやり考えていたが、急遽予定変更。
キャロットケーキを作ることにした。
蔦屋書店をあとにした私は、帰路で必要な材料を買い集めた。
本で見たレシピを参考に、
たっぷり3本の人参と
米粉パン作り用にと、友人からもらった米粉を使った。
じっくり焼くこと45分。
ちゃんと膨らんで美味しく焼けるかなという不安を抱きつつ、
部屋が次第に甘い香りとシナモンの効いたスパイスの香りで満たされていく幸福感に浸りながらオーブンをあけた。
思ったよりちゃんと膨らんでいる!
と安堵したのも束の間、
型から取り出すと
膨らんでなくない?!
想像よりだいぶ低身長なキャロットケーキにがっかり。
包丁を入れると、
べちゃっ。
なんだか思っていたより生地がずっしり重い。
失敗した…。
私のテンションは下がっていく。
そして、なぜこうなったのか気になり、居ても立ってもいられなくなった私は色々と調べた。
参考にしたレシピは粉の量に対して人参が多いみたい。そのせいで生地の水分量が多く、もったりしちゃった?
パン用じゃなくて製菓用の米粉なら膨らんだかもしれない
そもそも米粉で作るって難易度高いらしい…
色んな情報を見ながらあれやこれやと考えが巡る。
そして、ふと思った。
私、キャロットケーキ食べたことあったっけ?
(おそらく)過去に一度だけ、カフェで注文したことがある。
「キャロットケーキ」という可愛い響きに好奇心が芽生えたから。
その時は材料に人参が使われていると思ってもいなかったし、どんな味だったか全く覚えていない。
となると、私はどんなキャロットケーキが出来上がることを期待していたのか。
パウンドケーキ型で焼くから、パウンドケーキみたいに膨らむのかな。
私が大好きなシフォンケーキみたいにふわふわな生地だったら最高!
勝手に想像を膨らませ、期待しすぎてしまっていた。
キャロットケーキの正解って何だ?!
私が美味しいと思うキャロットケーキはどんな生地で、どんな味なんだ?!
理想のキャロットケーキを探す旅が始まった。(そんな大げさなものじゃないけど笑)
不思議なもので、関心を持つと人はどんどんそれに引き寄せられるらしい。
キャロットケーキって最近流行ってる?!と感じられるほど、オフィス、街中、SNS…日常の至るところで「キャロットケーキ」にまつわるものを見聞きするようになった。
パウンド型、ショートケーキ型、マフィン型、立方体、筒状…
形だけを切り取っても本当に色々なキャロットケーキがある。
食べてみると、味も食感も様々。
共通点は「人参が使われている」ということ。それ以外のルールみたいなものはきっとなくて、本当に自由。
「こちらが正解のキャロットケーキです」
と言われるものなんて存在しないし、どのキャロットケーキも全部正解、とも言える。
正解なんてないと、分かっているつもりだったのに。
近頃の私は、日々と将来に対して、存在しない正解を追い求めてしまっていたことに気づいた。
あれもこれも、ぜんぶキャロットケーキ。
そんなことを考えていたら、なんだか心が軽くなったのでした。
今思うと、失敗したと思った背の低いキャロットケーキも、あれはあれで美味しかった。
それでも、スパイシーでふわふわでしっとりした、私が思い描く理想のキャロットケーキに出会いたい。
あわよくば、そんなキャロットケーキを手作りしたい。
私のキャロットケーキブームはいつまで続くか。