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米の子版・具だくさん味噌汁の作り方

お味噌汁のお話です。


僕の母は昭和15年生まれで、東京で育ちました。

昭和30年代後半に大学を出て就職すると、仕事の傍ら花嫁修業として料理教室に通っていたそうです。

母の作ってくれた料理は、「名前のあるメニュー」ばかりだったと記憶しています。

夕食の主菜は、一日交代で肉か魚料理でした。

例えば月曜日がハンバーグなら、火曜日は焼き魚、水曜日はカレーライス、木曜日はお刺身、といった具合です。

付け合わせの副菜も、ほうれん草のおひたしとか、焼きナスのしょうが醤油添えなど、基礎的な料理をアレンジせずに作るという感じでした。

そして、母の作る味噌汁も、具が1種類か2種類のシンプルなものが多かったのです。

かつお節でだしを取り、かぼちゃだけ、じゃがいもだけ、ナスだけなど、野菜の具が毎回変わります。

わかめと玉ねぎ、溶き卵にニラ、なめこと豆腐、といったパターンもありましたが、いずれにしろ具だくさんではなく、僕は味噌汁とはこういうものだと思い込んでいました。

唯一の例外が豚汁で、豚バラ肉と玉ねぎ、人参、ごぼう、里芋、こんにゃくなどが入っていて、この場合は主菜が豚汁という扱いでした。


僕がいわゆる「具だくさん味噌汁」を初めて食べたのは、20歳の時。

場所は、札幌のとある企業の社員寮でした。

父が札幌市内の病院に入院していた時期で、当時フリーターだった僕が、病室の付き添いとして札幌に長期滞在していた頃です。

ホテルに連泊するのは費用がかかるからと、父の勤め先の支社長が融通を利かせて、寮の空いている部屋に泊まらせてもらっていました。

社員寮には支社に勤める独身男性たちが暮らしていて、住み込みの寮母さんが寮の管理と朝晩の食事の支度をしていました。

そこでいただいた料理は家庭的なものでどれも美味しかったのですが、いまでも忘れられないのが具だくさんのお味噌汁です。

大根や人参、ごぼうなどを細切りし、油揚げやもやしや葉もの、昆布など何種類もの具が入っていて、まさに「具だくさん」。

「こんなお味噌汁があるんだ!」

とびっくりして、いつもお代わりをお願いした程です。

外食先で食べる、豆腐やワカメなどがほんの少し入っているだけの気の抜けたお味噌汁と比べれば、格段の差でした。


米の子で提供しているお味噌汁は、開店当初から「具だくさん」です。

季節により変わりますが、12種類から15種類くらいの具材を、お味噌汁だけで摂ることができるようにしています。

具だくさんにこだわるのは、カノン小林先生のひと言に影響を受けたからでもあります。

僕がカノン先生のマクロビオティック講座に通っていたある時、先生がこうおっしゃったのです。

「毎日毎日、マクロビオティック料理を一所懸命に作るのは大変だから、とりあえず玄米ご飯と野菜の具がたくさんのお味噌汁を食べていれば、まず大丈夫よ」

和食の基本は、一汁一菜。

根菜から葉ものまでの季節の野菜と、豆腐や油揚げなどのたんぱく質、海藻類、キノコ類などを入れた具だくさんのお味噌汁さえあれば、とりあえず一食分の栄養は十分にまかなえます。


とは言え、10何種類もの具材を常時取り揃えて、毎日きっちりとお味噌汁を作ろうとするのも大変ですね。

滅多にお味噌汁を食べない、作るのが面倒くさいという方は、まずは一日一回、簡単なお味噌汁を食べることからはじめてはいかがでしょうか。

具はなくとも、だしを取らなくとも良いのです。

味噌を入れたお椀に、沸かしたお湯を注いで溶くだけ、これだけでお味噌汁の完成です。

このお椀に、小さめに切った豆腐やワカメ、刻んだネギなどを入れれば、ぐっと本格的になります。

少し手間をかけられるなら、大根や人参を切って鍋に入れて、水から煮出して火が通ったら味噌を溶く。

こうすると、根菜のうま味が出てスープとなり、汁の味に変化が出て楽しみが広がります。

もう少しうま味を感じたいのなら、しめじやえのきなどのキノコ類を加えれば、満足度が上がるでしょう。

さらに手間をかけられるなら、前もって干し椎茸や昆布を浸水してだしを取ると、よりうま味を得られます。

野菜や昆布にはグルタミン酸が多く含まれ、干し椎茸やえのきにはグアニル酸が多く含まれています。

異なるうま味成分が掛け合わされるとうま味が増すそうなので、具だくさんの方が味が複雑でおいしくなるのは確かですね。


複数の味噌を合わせると、さらにお味噌汁の味わいが深まります。

家庭で用意する味噌は、少なくとも二種類常備すると良いと思います。

そう聞くと「ウチではとても使いきれない」と思われるかもしれませんが、冷蔵庫できちんと保管すれば、風味は変わっても腐ることはありません。

和え物や炒め物の調味料としても、味噌は重宝します。

小松菜やほうれん草などの葉物を茹でて味噌で和えると、いつものおひたしとは違った一品になります。

玉ねぎやキャベツなどの炒め物に、醤油や酒、みりんなどの液体と味噌を混ぜ合わせると、味付けの幅が広がります。

トマトを使った煮込み料理やパスタソース、豆乳のベシャメルソースなどに味噌を加えるとコクが出て、洋風な味付けにも合います。

おかずがない時には味噌をごはんにのせたり、海苔を巻いたおむすびにトッピングしても美味です。

お味噌汁以外にも、味噌はいろいろな使い道があるので、ぜひ複数の種類の味噌を揃えて試してみてください。

ここでひとつだけ注意点。

だし入りやうま味調味料入りのものは、避けた方が良いでしょう。

大豆や麦、麹と食塩だけで造られた味噌をおススメいたします。


それでは最後に、玄米菜食 米の子の「具だくさん味噌汁」のレシピを公開いたします。

「食べると身体が温まる」

「野菜だけでもこんなに味があるなんて」

「お味噌汁だけで、これだけの野菜が食べられてうれしい」

などなど、開店以来ご好評をいただいているお味噌汁の作り方です。

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