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ぼかしたくなっても……


とある日。ブックストアにて。


解像度が低い背景に、クリアな輪郭のグラスが映っている。私の視線は、まずグラスに注がれた。素直な眼の動きをするなぁ。

グラスは特段高級なものではなさそうだ。食器洗いの歳月を思わせる薄い線の数々。色は暗め、ブルーとグレーが何かの割合で混ざったような色合いをしている。

やっと周りにも視線を移すが、グラスが置かれている台らしき色以外は、すべてがぼかされていて解釈が難しい。季節は?時間帯は?人はいる(いた)?


撮影者が背景をぼかす理由として、大きく2つを考えた。ひとつは「目障りなもの(スポットライトを当てたいもの以外)を消す/隠す」、もうひとつは「見る人の視線を誘導する」。

撮影者の意志・意図に基づいて「ぼかし」が行われるが、人の眼に映るものを敢えて削らなくとも表現しきることができれば、それは技術力が高い証になるのだろうか。


ぼかしたくなっても、ぼかさない。
ぼかしたくなったら、ぼかす理由を論理的に考える。

自分の選択をぼかさない力を養っていきたい。


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