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待ってるね

夏目漱石が「I love you.」を「月が綺麗ですね。」と訳すならば、私は「I love you.」を「貴方をいつまでも待っています。」と訳したい。「待ってるね」は、私が「好き」に代わって言える最大限の愛情表現で、貴方を待っている人が1人でもいるということを相手に知ってほしくて言っている。

大学に来ない彼に、一度も「大学に来い!」と言うことはできなかった。来たくても来れないことがあることを知っているし、好きだから余計に負担に思ってほしくなかった。だから代わりに「待ってるね」をたくさん言って、来た日は「待ってた」と言って。もしかしたら、これが負担に感じているのかもしれないけれど、いつか私の愛情表現だったと気付いてくれる日が来るといい。でも、流石に「来てよ!」と言いたくなるくらいに彼に会えないのはこの片思いで1番辛いことだった。

初めは近づきたいから始まったこの片思いは、いつの間にか1人でも大学で彼のことを待っている人がいれば、彼を救えるのではないかと思うようになって。その「待っている人」は私しか今はなれないんじゃないかと思うようになった。彼にとって私はそこまでの存在になれていないかもしれないのに、それでも、私が彼のことを諦めてしまったら、彼は1人に戻ってしまうと本気で思っていた。

最近、誕生日がきっかけで連絡が続いている人がいる。3つメッセージを送ったら、3つメッセージを返してくれて、そこに私の名前を入れてくれる。わざわざフリック入力で私の名前を打ってくれたってことがこんなにも嬉しいなんて。でも、彼はそんなことしない。名前も呼ばない。それがこの恋の答えで、全てであったことに気づくのに時間がかかってしまった。もう彼を別の人と比べている時点で私の中の恋の絶頂は過ぎ去って、次に進もうとしているのだろう。これを機会に、『好き』が『同情』に変わってしまう前に、この恋を終わらせようと思う。

全部楽しかった。

終わり方をどうするかはまだ決めていないが、この恋を終わらせても彼が大学に来るのを待ち続けようと思っているし、「待ってるね」とこれからも言い続けようと思う。一目惚れをした彼は出会うべくして出会った人だと信じたい。この想いを上手に表現できないけれど、恋愛的な好きがなくなっても、私の目には彼が魅力のある人に映ることは変わりないと思う。これからも会えないと寂しいし、会えると嬉しいと思うのだろう。私はもう彼を知っちゃったから。

いつか、ビールを飲めるようになったのも、1人で晩酌できるようになったのも、1番好きな曲が貴方が教えてくれた貴方の1番好きな曲だと、伝えられる日が来るといいな。

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