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葬儀屋さんに聞く、お葬式について知りたいことあれこれ~『DIY葬儀ハンドブック』スピンオフ企画VOL.1


 弊社で2019年10月に刊行した『DIY葬儀ハンドブック』の著者、松本祐貴さんが、葬儀に関する単純な疑問や知りたいことを教えてくれる新企画。第1回のテーマは「コロナ禍における葬儀」についてです。

コロナ禍で葬儀の規模は縮小傾向

 2020年、春先から始まった新型コロナウイルスの影響は葬儀業界にもあります。
 ひと言でいうと「葬儀規模の縮小」です。
 100人規模の葬儀が30人、30人規模の葬儀が10人などになってきています。特に会社関係の葬儀では香典、供花、弔電も受け取らないというところも見受けられます。
「コロナが怖いのでお葬式に親族・友人を呼びたくない」という人も増えています。また、喪主が親類などに声をかけても、高齢の方などは葬儀の参列を控えるケースもあります。
 ただ、現在でも50人規模の葬儀を行う喪主の方もいますし、故人の関係者が多くいて参列者が増えそうな場合は、葬儀の他にお別れ会などを催すこともあります。
 コロナで葬儀の規模を小さくし、予算をおさえた方の中には、骨壷をワンランクアップさせたり、棺をいいものに換えたりする方もおられました。
 逆にコロナを利用するのではないですが、節約したい方は、コロナを理由に葬儀の規模を小さくしている気がします。

中堅葬儀社では倒産するところも


 葬儀業界全体の話では、個人葬儀社はまだしも、大手、中堅などの参列者が多い葬儀を主に扱うところは売上に打撃を受けています。
 神奈川県でも3月に中堅葬儀社の倒産がありました。従業員が多く、会館を持っているような葬儀社の倒産はこれから増えてくるのではないでしょうか。倒産まではなくても支店の統合などを進める葬儀社が出始めています。
 式場などのコロナ対策は、公営式場では消毒液を設置していますが、検温の実施やマスクの常備は各葬儀社によります。また、参列者にはソーシャルディスタンスを保つように促しています。以前は「詰めてください」でしたが今は「離れてください」ですね。

参列者が多いと葬儀費用の節約にも


 葬儀には種類があり、参列者の多い順に一般葬、家族葬、直葬となります。規模で示すと、一般葬は参列者30名以上、家族葬は10人から30人程度、直送の場合は近親者数名となります。
 参列者を30名以上呼ぶ一般葬は大きな金額が必要に見えますが、香典をいただくので負担は軽減されます。費用をすべて負担する家族葬より、故人を偲ぶ方が多いなら一般葬をおすすめします。
 本当にまれですが、参列者を呼ぶだけ呼んで、香典を受け取り、食事もお返しもなしという喪主の方もおられます。これは、故人にも参列者にも失礼なので絶対にやめるべきです。

亡くなってから葬儀までの段取りをおさらい


 ここで『DIY葬儀ハンドブック』にも掲載されている、人が亡くなったときの流れをおさらいしておきましょう。
 まず、人が亡くなってから葬儀を迎えるまでの段取りです。
 現在の日本では、病院もしくは自宅、介護施設で亡くなる方が全体の9割以上を占めます。これらの場所では、医師により死亡確認がなされ、死亡診断書が作成されます。その死亡診断書と同用紙になっている死亡届を届出人が記入し、役所に提出します。
 死亡届が受理されると、火葬許可証となります。この後は、ご遺体の安置、お通夜、告別式、火葬です。
 お通夜、告別式の日取りは、喪主の希望日を考慮しますが、基本的には式場と火葬場の空き状況によって設定していきます。ですが、現在都市部では公営式場の混雑により待たされることもあります。なかでも、友引の日や午前中の予約は比較的とりやすい傾向にあります。
 場所と時間が決まれば、参列者へ連絡をしてください。その際、喪主は、葬儀の規模を決めなければいけません。僧侶は呼ぶのか、参列者は何人規模なのか、参列者の席順は、受付係は誰に頼むのか、通夜ぶるまいは行うのか、などです。
 わからないことがあれば、葬儀社がアドバイスをくれるので、ひとりで背負い込まずに相談しましょう。

コロナ流行下での葬儀はどうする?


 コロナウイルスが流行している最中に、喪主を務めることになったり、葬儀に参列するときにはどのように行動すればいいのでしょうか。
 式場でのマスク、消毒などの感染対策は必須です。葬儀社も協力してくれます。
 参列者の中には、コロナウイルスに感染すると重症化することが多い高齢者もいます。通夜、告別式、会食のときに密集、密接、密閉の三密にならないことが重要です。会食での大人数、長時間の飲食、マスクなしの会話、換気が悪く狭い空間などに特に気をつけましょう。
 通夜ぶるまい、法要の会食などは、その場で食べるのではなく、持ち帰りできるようにしているところもあります。もしくは、身内の数名だけが会食し、参列した親族は持ち帰りするという方法もあります。

コロナウイルスで亡くなった方の葬儀は?


 コロナウイルスにより亡くなってしまった方の葬儀についても触れておきます。
 対処や処置方法は病院によって変わってきますが、流れとしては、全身をアルコール消毒され、納体袋に収容されます。その納体袋は再び消毒され、納体袋を二重にして、霊安室に運ばれます。その後、納棺という流れになります。感染症の法律により死後24時間以内の火葬も可能ですが、義務ではありません。 
 厚生労働省のコロナウイルス感染症・火葬の実施マニュアルにあるように火葬の際、ウイルスは100℃の温度にさらされることで失活します。拾骨は通常通りで問題ないのですが、火葬場によって、まだ対応ができていないところが多いようです。
 現状は故人と対面し、ゆっくりとお別れの時間をとることも難しい情勢です。故人の意思を尊重し、心を込めた葬儀が、通常通り執り行えることを祈っています。

コラム:有名人の葬儀の裏側はどうなっているの?

 芸能人や政治家、財界人や地元の名士の葬儀はどのように行われるのでしょうか? 芸能人、政治家などでも扱いは違い、死因によっても違うので、葬儀の種類は1つとはいえません。
 その大きな違いというのは、大々的に葬儀をアナウンスするかしないかです。それによりマスコミ対応が変わってきます。
 完全に伏せたまま行う場合は、現在なら葬儀社も火葬場も個人情報保護の立場から、情報は漏らしません。
 例えば志村けんさんの場合も、人の出入りや時間帯にも気を遣ったでしょう。火葬場にマスコミが来ると、葬儀をしているほかのご遺族に迷惑もかかります。
 通夜や告別式に入ってしまえば、芸能人の場合は事前に事務所と打ち合わせがあります。どこまでマスコミを入れるかを決めなければいけません。昔は、弔問客を装って葬儀に参列し、隠し撮りをする報道機関もありました。今は報道する側もコンプライアンスがあり、無理やり撮影することはそれほどありません。
 都内で有名人の葬儀といえば、青山葬儀所です。美空ひばりの葬儀のときは、4万2,000人が訪れたといいます。X JAPANのhideの葬儀は築地本願寺で行いファンが5万人集まりました。道路までファンが出て、大変な騒ぎでした。
 2010年ごろまでは、有名人の葬儀に数千人集まるというのも見られましたが、近年、葬儀は近親者で行い、後日お別れ会という形式が多いですね。
 これも葬儀の規模縮小の流れなのかもしれません。


文・構成:
松本祐貴

著者プロフィール
松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。ライター&フリー編集者。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)。

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『-遺体搬送から遺骨の供養まで- DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版) 
四六変型判/並製 176ページ
ISBN 978-4-909646-25-5
定価(税込み) 1,540円
好評発売中!

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