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市川春子 作品集Ⅱ 25時のバカンス ※ネタバレ感想

丁寧かつオシャレに描かれるリアルな生活感の中、突如としてぶっこまれる世界観・常識の天地返し、コペルニクス的転回…それが市川春子ワールド。
この作品集第二集でも存分に味わえます。
もうすっかり虜です。

25時のバカンス

12歳差の姉と弟
天才科学者の姉
カメラで珍しい物を撮るのが好きな弟

弟の二十歳の誕生祝いに姉弟水入らずの海辺バカンスのはずだったが…?

姉は新種の貝に脳も内臓も食べ尽くされ、外壁を真珠のような物で覆われている状態
外壁部分に自我が残り、体内の空洞には貝が三種類棲んでいる

弟は子供の頃に木から落ちて左目に重傷を負った
後遺症で左目が血の色になっている

実は…
姉は体内で弟の左目になる真珠を育てていた
それを誕生日プレゼントにする
(最初からそのために貝を食べた?)

体内の三種類の貝は姉の知恵を持った状態で海底に帰り、繁栄(姉を姫と呼ぶ)

姉と弟の禁断の愛…とは言っても性的な交わりとかはなく、とても微笑ましく可愛い純愛が繰り広げられる
性的欲求が抑えられないとかではなく、あくまで姉と弟の間の愛が深まり過ぎてこうなっちゃった…って感じで、ほのぼの。
改めて市川春子、演出もビジュアルデザインもシナリオ構成も、全てにおいて天才だと思う。
このままで映画に匹敵する作品。

パンドラ

土星の衛星パンドラにある女学園
荒くれ者の二条ナナと謎の無口な新入生ロロ

ナナの不良グループに入り込んで身の回りの世話を焼くロロ。
初めは警戒するナナも次第に心を開いていくが…

実は…
ロロはナナの小さい頃の遊び相手クアドラ(ナナの兄が人間の脳のような働きを持つ土星圏由来の微生物を用いて作ったロボット)だった
兄の指示でナナを不良から真っ当な学生に戻すためにパンドラに来た
ナナはロロがクアドラだと気づいており、クアドラを故郷に帰してやろうとしていた→故郷に戻るよりナナのそばにいることがクアドラの幸せだった

卒業した学生は別の衛星に行くはずだったが、ナナを追っていったクアドラが見たのは宇宙空間に放り出され、破裂し、内容物を漏れ出させる学生達の姿だった
実はナナの兄は女学生を生け贄にして謎の宇宙生命体(でかいヘビみたいなやつ)の生態を調べる事を目的としていた
でかいヘビみたいなやつは学生達を体内に取り込んで、破裂した部分を別の素材で補い、救命していた良いやつだった
クアドラはでかいヘビみたいなやつと学生達とたもに宇宙の果てを目指して旅立つのだった…

市川春子らしい、容赦なきどんでん返しと非動物との心温まる交流。
ナナはキャラも出で立ちもパパラチアっぽくて好き。

月の葬式


日本の最北端に住む病弱な美青年とそこに迷い込んだ高校生の心の交流

高校生は天才的な頭脳の持ち主だが、親が医者で自分の未来も見通せている気がして病んでいる
→受験に向かう列車を間違えて日本最北端まで行ってしまう

実は…
美青年は月人で、皮膚が丸くパズルのようにくりぬかれて脱落していく奇病に冒されている(トライポフォビアの方、ご注意…)
約1000枚脱落すると内臓だけになって死ぬ
高校生は世話になった青年のために病気の原因を調べ、治療しようとする

リアルな生活感の中に唐突に出現するぶっ飛びファンタジー。
ちょっと筆者は集合体恐怖症なので後半キツかったが…
心温まるお話。

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