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#3 素晴らしい歌詞は、言葉の魔術師たちが丹精込めて書いている、と思う。

みなさんは曲を好きになるとき、どんなポイントに惹かれますか?例えばボーカルの声とか、メロディとか、バックバンドの演奏技術とか、人によって曲の聴き方って様々なのではないかと思います。

ドラムをやっていたこともあって、私の場合はドラムとベースの音にグッとくることが多いです。大好きなドラマーは、RADWIMPSの山口智史さんです(現在は活動を休止されていますが、復活されたらまた山口さんのドラムを思う存分聴きたい・・)そして歌詞もまた、私にとって大切な要素です。

例えば、中島みゆきさんの「ファイト!」という曲をご存知でしょうか。CMでも度々使われているので、サビの「戦う君の唄を〜 戦わない奴等が笑うだろう〜 ファイト!」というフレーズをご存知の方は多いのではないかと思います。でもこの曲のAメロを、みなさんは聴いたことがあるでしょうか。

あたし中卒やからね 仕事を
もらわれへんのやと 書いた
女の子の 手紙の
文字はとがりながら 震えている

ガキのくせにと 頬を打たれ
少年たちの眼が 年をとる
悔しさを握りしめすぎた
こぶしの中爪が 突き刺さる

この歌詞からのサビの「ファイト!」で、毎回めちゃめちゃグッときてしまうのは、私だけではないと思います。特に秀逸だなと思うのは、たったこの2フレーズで、二人分、もしくはそれ以上の人たちの人生の挫折を、ここまでまざまざと表現してしまうところです。また「悲しい」とか「涙が溢れる」とか、そういうわかりやすい表現は使っていないのに、こんなにも彼らの痛みに共感させられてしまうのは、一体どんな魔術なんだと脱帽してしまいます。この曲には、他にもたくさんの人たちの挫折の瞬間が、たった一曲の中にギュッと閉じ込められているのです。

歌詞というのは、小説よりも圧倒的に少ない言葉でその世界を表現しなければならないから、そこにもまたたくさんの魔術師たちがいるのだなと、グッとくる歌詞に出会うたびに思います。

まだまだ言及したい歌詞はあるものの、思いの外長くなってしまったので、最後にもう一曲だけご紹介させてください。

すでに解散されてしまいましたが、私は中学生の頃から「ジムノペディ」というバンドが大好きでした。彼らの「ツェッペリン」という曲は、こんな歌詞から始まります。

欲しいもの全部 ここに描いてみて
僕は何冊でも 読むよ

「愛してる」も「叶えてあげる」も「君のため」も出てこないのに、「僕」が相手のことをどんな風に、どれだけ想っているか、すごく伝わってくると思いませんか。個人的には、「言ってみて」ではなく「描いてみて」というところにもグッときました。うんうん考えながら描いている姿だけでなく、それを横でずっと待っていてくれる「僕」の姿までもが、この1フレーズで想像できてしまいます・・・凄すぎる。

みなさんの魔術師を、今度ぜひ教えてください。

こまつまい

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