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小松雨暗のリズムエッセイ

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書きたいテーマでリズムエッセイを書いています。 【リズムエッセイとは、小松雨暗の造語。構成を気にせず、勢いで書く書き方】
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#捨てる

捨てて後悔したもの【2】

 捨てる事により得られる快感に味をしめた私は、その後、2回、大がかりな「捨てる」を実行した。  2回目までは、良かった。  ダメだったのは、3回目である。  1回目で、ものはかなり減った。  ただでさえ、オシャレに興味の無い自分のクローゼットが、スカスカになった。それでも、なぜか、服は散らかる。つまり、まだまだ、衣服に関しては、私の管理能力を超える数がある、ということだ・・・きっと。  今では本当に、洗濯中とそれ以外の数着でいいとすら思うが、減らしたことで、外出時に着ていく

捨てて後悔したもの【1】

 捨てる生活は、メジャーになる前から、とある本の存在を知っていて、その本を見ては、自分の環境をスッキリさせることを夢見ていた。ご存じの通り、「捨てる」というのはもの凄いエネルギーを使う。そのことを自分も無意識に感じていて、「やりたいけどなかなか踏み切れないなあ?」的には感じていた。  そして、どんどん、捨てるということがメジャーになっていき、シンプルな生活が取り沙汰され、持たないというところまで、感覚的なそぎ落としは進んでいった。何もないワンルームに憧れた人は多いだろうと思

本 2

(「本」からの続き)  あれほど本を大事にしてきた自分に、こういうことが出来てしまうということを、自分の事ながら、どこかで思ったかもしれない。でも、窓から見えるその風景は、あっさり自分の感覚に馴染み、作家に対するなんらの感情も、すでに生じなかった。  実際、この重しは非常に具合が良かった。  大きなレジ袋が二つなのだが、今まで、かなり大きな数個の石ですらゴロゴロ動かす風に煽られていた覆いが、ビクともしない。しかも、立方体の落ち着いた佇まいである。いい仕事をしてくれるくらいに

 本が好きな人間なら、多分当たり前に同意を得られると思うが、自分が学生の頃、母親や妹は、私から本を借りるのを嫌がった。私が、これは読むべきだと思い、その本は今では思い出せないのだが、もしかしたら「きけわだつみのこえ」あたりだったかもしれない。それなのに、借りる事に対し、母や妹には、なんらかの抵抗があるように見受けられた。  そのことに対して、質問したことがあったと思うが回答はなく、曖昧に微笑まれただけだったが、その後、かなりたってから、時効と判断した母から、事の真相を聞くこと