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親友と音信不通になったあと、実はネオ・スピリチュアルに思いっきり振り切ってた話【前編】

最初にお伝えしておくと、私はスピリチュアルなことを全て受け入れないタイプでは無い。
毎朝テレビでやってる星占いはなんとなく見てしまうし、年末が近づくと雑誌に掲載される「20××年上半期運勢占い」という特集を美容室でカット中にいつも見てしまう。他県の人よりもいくぶんか信心深い奈良県人だし、厄年には厄除けの神社に行くし、お正月は神社でお札を買って帰る。
先週、仕事仲間から「おれ来年最強の年やねん!マヨさんは?調べたるわ!」と言われて調べてもらった芸人・ゲッターズ飯田の占いに書かれていたことが当たっていたのでこれからはゲッターズを信じることにする。
子どもの頃は、雑誌『ピチレモン』に載っていた、“好きな人と両思いになるおまじない”を一生懸命やっていた。
だけど、『女性を目覚めさせる』とか『宇宙とセッション』とか『エネルギー開花』とか『子宮のメッセージ』とかいう、なんていうんでしょう、ネオスピリチュアル(今私が名付けました)的なものはいまいち信用できない。
私は昔から、現実的なものやなにかしっかりとした裏付けのあるもの、たとえ世間一般に裏付けがなくても疑り深い私が何度も何度も確かめて「こりゃマジだ!」と思うようなものしか、こういった神秘的な話の類は信じられない。まぁ多くの人がそうだろうけど。


親友だった「ようこ」は、高校1年生で出会った。背が低くて童顔で、元ジュディマリのYUKIちゃんに似たイメージのとても可愛らしい女の子で、おしゃれだったし、可愛い顔してサバサバとした話口調にも好感が持てた。

隣のクラスでなんとなく顔は知っていて友達の友達、という感じだったけど、仲良くなったのは同じクラスになった高校2年生。お昼休みに「今日はお母さん、卵焼き二つも入れてくれてる」「え、見せて見せて!ほんとだーラッキーだね〜!」という会話を毎日繰り広げる女子か、「ラッパーの〇〇マジでヤバい」「明日、心斎橋のクラブに行く?(とわざわざ大きな声で話す)」といった会話を繰り返すスカートの短い女子のどちらかしかいなかった2年8組で、昔からちょっと人より発言力があって個性が強くどこかのグループに属してはいるが馴染めているとは言い難かった私は、お弁当のおかずについて数分盛り上がる女子たちのグループに消去法で属することにした。そのなかに、ようこもいた。
ようこは大人っぽくて現実主義で、弁当の中身について毎日飽きずに盛り上がる女子たちとは全然タイプが違ったように思えたけれど、ときどき私と気怠い会話をし、ときどき彼女たちと弁当の中身の話で盛り上がっていたので、世渡り上手ですごいなぁと思った。
日々面白くもなんとも無い話で盛り上がる女子たちの横にしか居場所がなかった私は毎日辛かったけれど、ようこと話す時だけはなんとなく心が落ち着いたし居場所があったように思う。

同じクラスのまま3年生に進み、変わらず毎日弁当の話を聞き続け、卒業した。卒業後、弁当の話をする子たちとは1度も連絡を取らなかったけど、ようこだけは時々連絡を取っていて、いつのまにか1対1で遊びに行くようになっていた。社会人になってからはお互いに会うことがかなりの重要度を占め、仕事の愚痴、彼氏の話、セックスの話、高校時代の彼女たちの話、人生観、価値観について話していくうちに、私たちはお互いを親友だと認め合った。
「あんたは一生の友達やで!」「こんな話、あんたにしかマジでできへんから!」と居酒屋で抱き合って思いを語り合う、若さ溢れることも何度もやった。
「○歳までに結婚したい!」「赤ちゃんが欲しい!」という、一般的な女子の思い描く未来は私たちにはなく、子供嫌いで仕事命のキャリアウーマンになりたかった私と、そこそこ仕事を頑張って美味しいものを食べて好きな男と楽しくデートをしていいところで結婚をしたいと思っていたようこは、お互いの価値観が合い、話していてとても心地が良かった。

ようこはたびたび、仕事が辛いと言っていた。正確には、仕事はそこそこだけど、先輩の女性が辛いのだと。なんでも、悩みを仕切りに聞き出そうとしてきて、こちらが悩みがあるように言うと、お祓いやらご利益のある神社の話、滝行、パワーストーンなんかの話をしてくるのだとか。その人自体が石を売りつけてくるような怪しい感じではないけれど、とにかくその非現実的な話を肯定的に聞くふりをしていることが苦痛なのだと。
私もそうだけど、ようこも新興スピリチュアル系は信じていない。神様や仏様は信じるし、縁結びの神様に一緒にお願いに行ったこともあるし、ようこが車で事故をしたときにはお祓いに付き添った。ようこの実家は田舎の方の小さな村にある本家なので土着宗教のようなものの影響を受けた、仏教の中でも独特の宗教(小さい宗派)だと聞いたことがあるので、日本に昔からあるものや八百万の神様のようなものは信じるけれど、近年降って沸いたような「ヒーリング」や「セッション」という言葉を多用する人たちは信じていなかった。
「そのへんのおばちゃんがちょっと勉強しただけで神様がなんでお告げをくれんねん」とネオスピを大いに揶揄していたこともあるくらい、ようこは私と同じ現実主義だった。

私が26で結婚をしたとき、お色直しの中座の際には親友代表としてようこをリクエストしたし、結婚式の二次会の幹事もお願いした。2人で旅行も行った。暇があったら思い出しようにくだらない画像をメールで送りあった。

数年後、ようこは私の紹介で、私の夫の同僚と結婚した。やさしくておっとりしたイケメンの彼は、おとなしそうに見えてチャキチャキしているようことお似合いだった。ようこの結婚式では私が受付をしたし、二次会も手伝った。


そこから5年ほどは、これまでと変わらなかった。うちの夫婦もようこの夫婦も仲間とワイワイ、という雰囲気を好むタイプではないので一緒にで遊ぶことはなかったが、今まで通り私たちは2人で飲みに出かけ、悩みを相談し、お金の話や親の話など軽くは話せないような話も打ち明け、くだらない画像をLINEで送り合っていた。

以前から私たちは毎日連絡を取り合うわけではなく、数週間、ときには1ヶ月近く何の連絡もないときもあった。しょっちゅう連絡するわけではないのに、連絡したらくだらんことで盛り上がれて、会ったら毎日あってるくらい話が盛り上がるし、わたしたちっていい関係だな、と思っていた。
だからこのときも、前回連絡を取ってから1ヶ月以上連絡を取っていなかったことに気づいて何気なく連絡をとった。
「元気?」のつもりで、ネットで見つけた面白い猫の画像を送ってみたところ、何日経っても連絡が返って来なかた。

いつもなら、翌日には返事が来るのだけれど、返事が来ない。

おかしいな、と思いながら、翌週もう一度、くだらない猫の画像を送ってみた。すると、数時間後スタンプが一つ返ってきた。
「飲みにいこうよ」
と送ると、
「おー」
と返ってきた。
いつもなら送った画像への反応もあるし、飲みに行こうと誘えば「来週の◯曜日ならいいよ!」と返ってくるけれど返って来なかったので、私から「私はだいたいいつでも行けるから!」と送ると、ようこはまた「おー」と返した。

反応が悪いことにちょっと不思議な感じはしたがさほど気に留めず、結局ようこから予定は送られてこないまま数ヶ月経ったころ、私が妊娠した。

つわりがひどく、水を飲んでも吐く始末。栄養を取れないので病院で3日に一回点滴をしてもらい、トイレの前に布団を敷いて寝る日々が4ヶ月間続いた。
つわりが始まる寸前、ようこに「妊娠したわ」と報告のLINEをしたら、「おー、産まれたら見にいくわ!」という返事が返ってきた。
産まれたら、ということはそれまでは? と思ったが、そのLINEの数日後には私はもう寝たきり状態になったし、意識が朦朧とするなかでようこのLINEに対するモヤッとした気持ちは一旦そっちのけになっていた。


8月の終わり頃、13キロ減ってゲソゲソになった私はやっと人並みの生活ができるようになり、ふとようこのことを思い出した。
私の連絡にあいまいな返事を返したことや、いつもと違う反応だったこと、この数ヶ月間でようこのほうから1回も連絡が来なかったことなどを考えると胸がザワザワした。

何かしたかなぁ。

私って昔から歯に絹着せぬ物言いが悪いところだし、空気が読めない、勘違いサバサバ女系の要素が強いし、ようこは「それはあんたのいいところであって、私は重宝してる」と言ってくれたことを信じていたけれど、実はずっと嫌だったのかなぁ。だとしたら、飲みに行ったときに「あんたにしか言えない、信用してるで!」ってわざわざ向こうから言ってもこないよな? でももしかしたら、我慢して私と会ってたのかもしれない。
いやいやいや。さすがの私でも、何度考えてもようこが私と絶交したくなるくらいの失言はしていないし、そんな態度も取ってない。何度思い返してもそれはない。
何日も何日も考えて頭の中がぐるぐるした。

私は人に簡単に悩みを打ち明けないので夫にも胸の内を話すことはほとんどなく、それが自分のせいでこうなったと考えればなおさら人に相談しづらかったけど、夫が度々「ようこと飲みにいかんの?」とか「ヨシロー(ようこの夫)がさ〜」と話してくるので、思い切って事の次第を打ち明けたてみた。
夫は人の気持ちとか考えるのが、上中下でいえば下の中くらいのレベルの人なので「わからん」としか言わなかったけど、「もう一回連絡してみたら?案外、仕事で嫌なこととかあって塞いでるのかもしれないし」といってくれた。
季節は晩秋。
年明けには産まれる予定だったので、そろそろ会っておかないと、子どもが生まれたあとは思うように連絡が取れないかもしれないし、もしようこが何か問題を抱えていたとしたらゆっくり相談に乗れるのは今しかない。
勇気を出してもう一度ようこに連絡をとることにした。

「久しぶり、元気してる?最近LINEしてないけど、大丈夫〜?私1月に子ども産まれるから、ゆっくり会えるの今だけかもしれんし良かったら遊ぼうよ!」

ドキドキしながら返事を待っていると、夜遅くにLINEがきた。

「おー、来週お昼やったらいけるで〜」

と、ひとこと。
正直会うのは怖かったし、胸がザワザワするし心はもやもやしたけれど、じゃぁこのまま一生会わないの?と思うとそれは違うと思ったので、頑張って会う約束をすすめた。
「じゃぁどこにする?」
「どこでもええでー」
「四条あたりでランチする?」
「ええでー」
「私予約しとくわ!」
「おー」
いつもなら、好きなカフェとか候補をいくつも出してくるのに、今回は出して来なかった。まぁ、予想はついていたけれど。


後半へ続く。

親友が音信不通になったあと、実はネオ・スピリチュアルに思いっきり振り切ってた話【後編】


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