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私の青春「夢小説」に思いを馳せる

漫画やアニメにどっぷりとハマっていた学生時代。
オタク友達同士で語り合うほか、二次創作絵を書きあったり漫画の音読会をしたり。
なかでも私を沼に引きずり込んだのが、「夢小説」でした。

今でもあるのだろうか、「夢小説」。
二次創作のひとつのジャンルで、漫画(など)の世界に「自分」を登場させて、キャラクターと恋愛したり友情を築いたりする。
冷静に考えると大変おこがましく恥ずかしいようにも思えるけど、それを忘れるほどとにかくハマっていた。読むだけでなく、書くのも。

インターネットの海にごまんと漂うケータイ(ガラケー)向けの夢小説サイト。そのひとつに私のサイトもある。

夢小説というと、男性キャラクターと自分との恋愛を妄想たっぷりに描いたものと捉えられやすいけれど、実際はそればかりではなかったと思う。
いつの時代もオタクというものは、好きなキャラクターの人物像への理解を深めようと、いつも妄想に一生懸命だ。
あるシチュエーションでどんな振る舞いをするか、どんな発言をするか、好きな人にはどう接するか、恋人ができたらあのキャラとの友情とどうバランスをとるか。
このような妄想を形にして、自分のなかの理想のキャラクター像を確立する手段として、「夢小説」があったと思う。

私の場合、「自分」とキャラクターの関係性を描きたいとはまったく思っていなかった。
ただ、異分子である主人公を登場させて場を動かし、キャラクターたちの反応を描きたかった。
主人公を登場させずにキャラクターだけを動かすこともできたし、そちらの方が二次創作のジャンルとしてよりオーソドックスであったけれど、どうしてもできなかった。
たぶん、直接的にキャラクターに手を加えることに恐れ多さを感じたのだと思う。創作キャラをかませることで、二次創作としてもうワンクッション置き、自分の解釈世界のなかで思う存分描きたかったのだと。
当時高校生ながら、無意識にもなかなか複雑なことを考えていたなぁ。ただ同志は多かったようで(もちろん全員が同じ思考だったわけがないけれど)、当時は夢小説サイトがものすごく賑わっていた。

私の話に戻ると、当時は忍たまにどハマりしていて、推しキャラであった滝夜叉丸と喧嘩しながらカップルになる話や、転生主人公が理不尽な運命にやさぐれていたところを同級生(六年生)に救われる話、人間に化けて学園に通う狸の主人公が同級生(五年生)と薄く関わりながら日々を過ごしやがて別れる話など、我ながら個性たっぷりのストーリーを書いていた。

恥を忍んで、供養のために貼ります。南無。
とはいえ、若さはあれど恥ずかしくて見返せないほどではない。我ながら結構頑張ってたと思う。
http://lyze.jp/8mpmg/

で、なんで夢小説の話をしたかというと、今流行りの(というには遅すぎか)「悪役令嬢」なるものになんとなーく既視感を覚えていた謎が解けたため。
これ、夢小説でいう「傍観」に近いのでは?

私は忍たま界隈でよく見たのですが、夢小説で「傍観」がトレンドだったときがありました。
夢小説によくある「現実世界からのトリップ」「逆ハーレム」のようなメタ要素が前提で、オーソドックスな例では「突然トリップしてきた女の子がやたらモテて男たちを腑抜けにしてしまうので、第三者である主人公が働きかけて正常に戻していく」みたいなものです。
ものによっては、腑抜け男と真っ向から対立し、そもそものキャラクター像崩壊もやむ無しのためなかなかシビアではあるのですが、夢小説にどっぷり浸かりマンネリを覚えていた女子たちにはちょうど良いスパイスだったのでしょう。かくいう私も楽しんでいました。

メタ的要素には不思議な魅力があるのだなぁと思います。毎日のように広告でそれっぽいのを目にしますが、量産されすぎてかえって定番になる勢い(もうなっているのかも)。で、さらにそれを前提とするメタ作品が産まれていたりするのでしょうか。

尻切れトンボに終わりますが、青春を捧げた自分の夢小説を読み返すと、一生懸命にオタクだったあの日々が思い出されます。
あのときほどの情熱を、この先かけられるものはあるのかな。

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