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自らの物語のルーツを辿る旅 『猫を棄てる』を読んで

妻が珍しく本を買って来てくれた。

家が傾くほど溢れる本に辟易していたのに、コロナで篭りがちな自分を見て可哀想に思ったのか「貴方、これでも読んでみたら」と村上さんの本を買って来てくれたのだ。

人は自らの親の影響を受けつつ、
己が生きた時代の影響を重ね合わせながら、
自らの人生を生きる生き物なのだ

それがこの本を読んで思ったことだ。

村上さんの物語は、何処か不思議なところがあって、この世とあの世の境目が曖昧でそれらを行き来することが多くて、時に戦争の話も出てくるし、父親も出てくるが、その父親のことも多くは語られず父親という蓋然性だけが提示されていることに何か漠然とした違和感を自分は感じていたのだが、この本を読むことでその理由の一端が垣間見えたよう気がした。

村上さんの父親とのリアルで不思議な体験が、村上さんの物語を構成する大事な要素になっている。それがわかってとても嬉しかった。

何故なら自分の父親も厄介な俳人で家には何故か猫がいて、それこそ不可思議な出来事が山のようにあって、それが自分の物語を語るときの避けては通れない要素となっていて、そんな自分を持て余す自分に辟易していたとき、妻が偶然にもこの本を僕にくれたのだ。この本に出逢えて良かった。嬉しかった。

妻にはこっそり心の中でお礼を言いたい。ありがとねと。

#猫を棄てる感想文

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