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ボロボロのランドセルと水色のランドセル(小山の戯言)

小学生の頃、一人だけボロボロのランドセルを背負った女の子が居た。その子には父親が居なかった。
その年、クラスで将来の夢を発表する会があって「サッカー選手に俺はなる!」「女優になりたい」などの夢が飛び交う中、ボロボロのランドセルを背負っていた女の子は「離婚弁護士です」と言った。
小学生の俺はそれが全く理解できなかった。自分の番が回ってきた時「パン屋です!!!」と言った。特にみんなからの反応も何もなかった。

その子は少しいじめに遭っていた。かと言って自分になにかできるわけでもない。
ランドセル置き場には綺麗に、赤・赤・赤・黒・黒・黒、と並んでいて、それが普通だと思っていた俺は確かに「ボロボロで茶色っぽくなった赤いランドセル」が「変」に見えたのだ。
その「変」がみんなを惑わすんだろうなぁ。

こないだ、車の窓から小学生の列が見えた。

水色・黒・赤・ピンク・緑。

それはそれは多種多様なカラーが映えるランドセルたちが並んでいた。
昔見たランドセル置き場の黒と赤だけよりよっぽど綺麗で、ソレと同時に茶色くなったボロボロのランドセルを思い出した。
俺はパン屋にはなれなかったけれど、その子は弁護士になれたのだろうか。


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