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ユーモアと心地の良い距離の取り方(小山の戯言)

小学生の頃は入院が多かった。小児喘息とアトピー性皮膚炎。普通の人よりも酷かったように思う。
繰り返す入院、担任の先生によって対応は違った。
クラスの寄せ書きを持ってくる先生、「なんかあったら言えよ!」みたいに熱血な人、一切面会に来ない先生も居た。

個人的には一切面会に来ない先生が好きだった。
大ごとにしないで欲しかったからだ。 TVでよく見る入院患者は自分の病気なんかより、とてつもなく重かった。でも自分の病気は生まれ持った体に異変があるだけで、いわば「一生付き合う」もの。
今すぐ死ぬかもしれないとかそういうものではないから、入院も体のメンテナンスに行くみたいなスタンスなのだ。

だから担任が寄せ書きを持ってきた際には「こいつマジでどうにかしてやろうか」という気分だった。退院して学校に行けば「生きてたか!」と同級生に言われる日々。出来ればそっとしておいて欲しかった。

小学5年生にもなると入院は無くなった。(アトピーで体は傷だらけだが)友達もまぁまぁできて楽しい日常を送っていた。
そんな中、隣のクラスにハンディキャップを抱えた子が転校してきた。

先生は「隣のクラスに障害者の子がいます!足が不自由で車椅子ですが、普通に接しましょう!話せば本当に面白い子だから話しかけてみて!」と言った。
俺は「"普通に接する"ってなんだろう」と思った。
みんながみんな無理して話しかけていてその子は困っていたし、一軍女子たちが固まって「かわいい〜」のノリでその子の周りに集い、盛り上がっていた。

先生の対応もみんなの対応も今考えれば誰も悪く無いんだけど、その時の俺はなんかモヤモヤしていた。
障害を抱えていようが、俺みたいに軽い持病があろうが、健康な体だろうが、みんな1人の小学5年生。大人が変に煽って「そういうムーブ」を作るのは正しいことなんだろうか。

ちなみに一切面会に来なかった先生は家庭訪問の時に「僕は大人喘息なんですよ」と吸入器を見せ「何かあったらこれ使います?」と笑いながら冗談を吐いた。
ユーモアと心地の良い距離の取り方。面会に来なかった理由が分かったような気がした。

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