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秋祭りを撮りまして
秋が好きです。
目のまえに春と夏と秋と冬のパレットがあったなら、私は迷わず秋色を筆にとり、残暑は残っていても夏の盛りとは肌ざわりの異なる夕空を描くことでしょう。秋、いいんです。秋を撮りに出かけましょう。
百日紅は夏の季語のようですが、花の時期は七月から十月にわたり、夏と秋を結んでくれます。秋のやわらかい西日がよく似合いますね。
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近所で四年ぶりの秋祭りが催されると聞いて、私はカメラを片手に歩きました。浴衣を着た女の子がうきうきしながらお母さんと前を行っておりましたので、お祭りの会場である神社も近いと私は歩みを進めます。
しかし、傍から何者かの視線を感じて、私は足を止めました。右手に続く石壁の穴を覗くと、犯人はすぐに分かりました。
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葉に隠れていますが、じつは彼あるいは彼女の後ろに、もうひとりの彼女あるいは彼が座っていました。無作法にも挨拶もせずレンズを向ける者を軽蔑するような冷たい瞳で、しばらく私はじっと見つめられたものです。ごめんて。
そうして道草をくいながら、私はついに神社にたどりつきました。長く街に住んでいながら、初めて赴くお祭りです。
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まさかこれほど人が集っているとは思いもよりませんでした。秋らしく燃える空の下、四年ぶりのお祭りは熱気に満ちあふれています。
林檎飴は見ているだけで心が澄むような気がしました。
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たこ焼きを焼く店主の手さばきに見とれていたら、いつのまにか私の手には大きなたこ焼きが六つ入ったプラスチックのトレーと割り箸がありました。
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もうもうと立ち込める煙に誘われて、ねぎまと、ももにんにく、タン入りつくね。三本だと安くなるという商売上手なお店に、まんまとしてやられました。
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鮎の塩焼きなんて、ずるいでしょう。
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買わざるをえないスズカステラの入った紙袋を片手に、ひとくち、ふたくち、ほっぺたを膨らませながら、私はようやく帰路についたものです。
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秋色で描かれた夕空は、藍色に染まっていました。まだ遠く聴こえる祭り囃子に後ろ髪をひかれながら、思います。
ああ、やっぱり、秋が好き。
本記事の撮影機材
OLYMPUS PEN Lite E-PL7
MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7
iPhone 12 mini(鳥居を映した写真のみ)
いただいたサポートで牛乳を買って金曜夜に一杯やります。