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文学で心を整える夜

こんばんは。やさしい文芸・写真の人、小牧幸助です。

生産的であること。誰かの役に立つこと。そういうことばかり考えながら毎日忙しく働いていると、なんだか、じぶんの心の在るべき場所を忘れそうになります。

photo by Komaki Kosuke

忙しない平日を乗り越えて、ようやく辿り着いた土曜日の夜。私は部屋を少しだけ暗くして、じぶんの心を整えます。生産的でも、誰かの役に立つわけでもないけれど、どうしても私にとって必要な時間です。

photo by Komaki Kosuke

そう、私には無意味な時間が要ります。ただ灯りが宿ったガラスの光を眺めたりします。お気に入りの物たちが、ただそこにあることをたしかめます。そうしていると、少しずつ心の在るべき場所を思い出します。

photo by Komaki Kosuke

ぼんやりとしているうちに、本を読みたくなってきます。こういうときは実用書ではなく、文学がよいのです。実学からは、ほど遠いところに在るのが文学です。

photo by Komaki Kosuke

読書を楽しむために、紅茶を淹れましょう。もう夜なのでカフェインレスです。

photo by Komaki Kosuke

私の大好きなLotus Biscoff もいただきます。期間限定でチョコ味が出ているようです。チョコならコーヒーでもよかったかもしれませんが、しかしビスケットはアールグレイとよく合います。

photo by Komaki Kosuke

何も生み出さない時間のなんと豊かなことでしょうか。

photo by Komaki Kosuke

私は内田百閒が好きです。夏目漱石のお弟子さんです。小説もさることながら、随筆も良い。「百鬼園随筆」はその随筆集です。軽妙洒脱な語り口で、さっぱりと暮らしている百閒先生の、その生き方に癒やされます。

思えらく、人生五十年、まだ後五六年あると思うと、くさくさする。一年の中に十二ヶ月ある。一月に一度は月給日がある。別に死にたくはないけれど、それまで生きているのも厄介な話である。人生五十年ときめたのは、それでは生き足りない未練の命題である。余程暮らしのらくな人が考えた事に違いない。

内田百閒「百鬼園随筆」新潮文庫 157.

百閒先生の詭弁に巻き込まれながら頁を繰っていると、いつのまにか心が在るべき場所に落ちついているからふしぎです。生産的であろうとか、誰かの役に立たねばなどと肩ひじを張らず、楽に生きなさいと言われている気がします。

ビスケットを食べ終え、アールグレイを飲み干すと、すっかり心が元の場所へ戻っている気がいたしました。

みなさまも、「実学」の世界に疲れたら、文学に触れてみてはいかがでしょうか? ただ休日の夜に読んでいるだけで、ふしぎと心が落ちつきますよ。

お時間があるときは、ぜひ。

ではまた。




photo by Komaki Kosuke

いただいたサポートで牛乳を買って金曜夜に一杯やります。