見出し画像

佐藤優樹が私にくれたもの

 2021年12月13日日本武道館にてモーニング娘。’21佐藤優樹の卒業コンサートに参戦した。

 久しぶりの単独コンサートが楽しみな気持ちと、それをはるかに凌駕する寂しさを抱えながら会場に向かった。
 人生で初めてできた推しという存在。そんな初めての推しの卒業を迎える気持ちは本当に複雑だった。辛かった。

 だけどコンサートを終えて少し気持ちが落ち着いてきたところで、改めて思う。佐藤優樹を好きになって良かった。最高の卒業コンサートだった。

魅了するパフォーマンス
 私がまーちゃんにハマったきっかけはその圧倒的なパフォーマンス力だった。マイクを持つその指先。細かなステップと足さばき。首の角度や視線の送り方。本能のままに動いているようでありながら、全てが完璧に計算されているかのようにも見える。
 この日もまーちゃんがくるくると華麗に回るたび、髪の毛の先から衣装の揺れまでも完璧な美しさで舞った。これがオーラというものなのか、ステージ上のまーちゃんは確実に何かをまとっていた。

 そして息をのむような表情づくり。モニターに抜かれる一瞬でギュッと胸の奥の方を掴まれる掌握力。
 まーちゃんのパフォーマンスを語る上で、その抜群のリズム感による完璧な音ハメも欠かせない。今回のパフォーマンスでもバチバチに発揮されていた。動作だけではなく、その視線や眉の動きですら音にパシン!ときれいにハメてくる。

 まーちゃんは楽曲を何度も聴き込み理解し、ステージの照明やモニターを把握して魅せ方をしっかりと研究している。こんなアイドルはもう現れないとだろうと思うと、どうしようもない喪失感にかられた。

 あとこれはまーちゃん個人のことではないんだけど、今回のメドレーは本当に格好良かった。過去一で好きかもしれないくらいには痺れた。


溢れんばかりの多幸感
 
今回のステージはアリーナの中央にメインを置いた全方位型のステージだった。四方八方に目まぐるしくフォーメーションを変えながらのパフォーマンスとなる。

 メンバー同士が入り乱れるように移動する中、アイコンタクトで微笑み合う姿や、すれ違いざまにポンと手を触れあうような様子が時折見て取れた。 
 もちろん演出ではない。
 パフォーマンスの中でメンバーみんなが自然とコミュニケーションをとっている。
 まーちゃんや他のメンバー達が、このステージを心から楽しんでいることがありありと伝わってきた。なんという多幸感。見ているこちらまで思わず口角が上がる。

 曲によってはフリーで動く場面があったりするのだけど、いつになくあゆみん(同期の石田亜佑美)との絡みが多かったように感じた。
 加入当初はあまり気が合わなかったという二人が月日を重ね、この卒業コンサートで楽しそうに幸せそうにふざけ合ってはしゃいだ様子を見せていて、感慨深いものがあった。そしてそんな様子からも、「あぁ、卒業なんだな……」と実感が私ににじり寄ってきた。

 通常のような卒業セレモニーのなかった今回は、途中のMCでメンバーが一言ずつまーちゃんへのメッセージを添えた。
 
 そこであゆみんはコロナ対策で人数制限のかかった客席にたいして「佐藤優樹を、最後に直接もっとたくさんの人に見て貰いたかった」と声を詰まらせた。
 私も同じ気持ちだよと。満員の客席で、もっといっぱいのサイリウムの中で、大きなまーちゃんコールで見送りたかったよと。私は心の中で激しく同意した。

ソロ衣装に込められた想い
 
モーニング娘を卒業するメンバーは、ラストの衣装にメンバーカラーをベースにしたドレスを着るのが定番だった。でも私にはまーちゃんがメンバーカラーであるエメラルドグリーンのドレスを着る姿は、なぜだか想像しがたかった。

 そして当日。まーちゃんが着ていたのは、繊細な黒のレースにラインストーンをあしらった控えめな衣装だった。 
 「なんで黒なのって、思ったでしょ」
 まーちゃんはそう言って、その衣装に込められた意味を話し始めた。

 光が当たっていないところだと一見真っ黒に見える衣装。でも散りばめられたラインストーンは、照明が当たることによってグリーンを帯びた色味で反射する。

 それは真っ暗な客席いっぱいにエメラルドグリーンのサイリウムが光る、ステージから見た今の光景と同じなのだという。自分が見ているこの光景をイメージした衣装を作ってもらったのだという。

 自分は一人では輝けない。共に活動するメンバーや、ステージをつくる全てのスタッフ、そしてファンが照らしてくれることで自分が輝ける。だからこの衣装にしたと話してくれた。       

 まーちゃんはゆっくりと、客席全てを見渡しながら丁寧に話してくれた。これで泣かないファンがいるだろうか。ちなみに私はぼろぼろに泣いた。
 こんなに素敵なことを考えられる子なんだ、佐藤優樹は。これこそが佐藤優樹なんだ。

 エメラルドグリーンのサイリウムと、反射するまーちゃんのドレスが、キラキラときらめいてとても綺麗だった。


笑顔の君は太陽さ
 
ラストに披露したソロ曲。まーちゃんは今の自分にぴったりだと思ったから選曲したらしいけど、私達ファンにとってもまーちゃんにぴったりな曲だと思った。
 しんみりした雰囲気にしたくない。いつも通りのコンサートみたいにしたい。自身の卒コンについてそう言っていたまーちゃん。
 ニコニコ楽しそうに歌うまーちゃんを見て、「そうそうこの笑顔が好きなんだよ」ととても嬉しい気持ちになった。

 曲の間奏で、改めてメンバー、スタッフ、ファンへの感謝を述べたまーちゃん。ただ最後に「つんくさん、私にたくさんの素敵な楽曲と出会わせてくれてありがとうございました!」と少し声を詰まらせて叫んだ瞬間、ぶわっ!!とまた涙が溢れて止まらなかった。
 それまでニコニコで”いつも通り”のまーちゃんだったのに、その言葉をきっかけに涙を零しているのを見て、もう堪らなかった。

 だけど私の知る限りでは卒コンの場で楽曲への感謝を述べたのはまーちゃんが初めてじゃないだろうか。その言葉を聞いて、「まーちゃんはどんな形であれ、きっとずっと音楽を続けるんだろうな」と感じられて喜びも感じた。

佐藤優樹が私にくれたもの
 
仕事で病んでいた私を元気づけてくれた。
 モーニング娘。を観ている時間は同世代の少女のような気持ちになれた。
 ひたむきに頑張る姿の美しさと眩しさを思い出した。
 誰かの頑張りや笑顔で元気をもらえることを知った。
 大好きな曲がたくさん増えた。
 アイドルというものに対するイメージを覆してくれた。
 知れば知るほど沸き続ける興味を持たせてくれた。
 アラサーだけど、夢を持とうと思った。
 推しのいる楽しさを教えてくれた。
 推しが卒業する寂しさも教えてくれた。

 ありがとう、まーちゃん。

 心にぽっかり穴が開く、ってとても秀逸な表現だと思う。
 その穴を何で埋めるか、まだ見つかっていないけど。
 佐藤優樹を好きになって、本当に本当に良かった。

  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?