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アジア紀行~ベトナム・サパ①~

サパってどこ?

この旅の大きな目的の一つがサパ(SA PA)に行くことだった。本で読んだのか、テレビで見たのか、今となっては記憶がはっきりしないが、冒険心をくすぐる土地であったことは間違いない。
サパは首都ハノイから北東に250km、中国の雲南省と接する標高1,600mの高地の町である。フランス植民地時代に避暑地として開拓され、平地が少なく斜面にできているので、町の中には階段や坂道がとても多い。サパの町からは、ベトナムの最高峰ファンシーパン(標高3,143m)が一望できるという。
ベトナムの人口の90%を占めるのは、キン族という部族だが、サパ周辺にはモン族、ザオ族などの山岳少数民族が暮らしている。彼らの住む村にも行ってみたかった。

ハノイからの移動は鉄道を利用する。夜行列車でラオカイ(LAO CAI)まで行き、そこからサパまでは車だ。列車のチケットは2日前にハノイ駅で購入済みだ。列車は夜行なので、往復とも寝台車のチケットを買うつもりだったが、帰路はハードシートしかないと言われる。仕方がないので、とりあえず(往)寝台・(復)硬座となった。

しかし、サパに到着した後のことだが、滞在先のホテルで、ハノイまでの寝台車のチケットがとれると聞いた。間にツアー会社が入るのでかなり割高だったが、結局往復とも寝台車で移動することができた。

写真の下のチケットが〈ハノイ→ラオカイ〉で、545,000ドン、上のチケットが〈ラオカイ→ハノイ〉だが、値段が書かれていない。実際の料金は、882,000ドンだった。

夜行列車に乗る

午後7時、ホテルからタクシーでハノイ駅に向かう。夜の待合室は大勢の人がひしめき合っている。みんな大声で話をするからとてもうるさい。
ラオカイ行きは〈SP7〉という列車だが、どのタイミングでホームに入って乗車するのかわからない。
1時間近く待った頃、放送を聞いた周囲の外国人のバックパッカーや大きな荷物を持っているベトナムの人たちが動き出す。自分もそれについて移動する。不安はあるが、間違いなさそうだ。
ハノイ駅は、線路もホームもほぼ同一平面で、いくつも線路を横断して、わずかな灯りの下に停車している列車まで歩いていかなければならない。

午後8時、ハノイ20:35発のラオカイ行きに、無事に乗り込む。号車ごとに切符を確認する駅員がいる。自分は10号車だった。

列車の中は、狭い通路の片側に定員4名の部屋が並んでいる。

チケットを見ながら指定の部屋の扉を開けると、すでにドイツ人のカップルと、ベトナム人の青年がいた。ひとつ空いていた下段のベッドに荷物を置き、靴を脱いで座る。広くはないが、シーツは清潔で悪くはない。
一晩同室になる仲間に挨拶をして、簡単に自己紹介をする。向かい側のベトナム人の青年は、サパに帰省するところだという。
ベッドサイドの灯りでしばらく読書し、やがて消灯。電車の揺れが眠りを誘う。

ラオカイに到着

翌日の早朝5時過ぎ、乗客を起こすために、車掌が各部屋を回ってきた。
目を覚まして、急いで用意をする。
午前5:20、列車はラオカイ駅に到着。まだ薄暗い。
人の流れに乗って、線路を横断し、改札口に向かう。

さて、問題はここからだ。サパで宿泊するホテルはネットで予約しているが、ラオカイからサパまでは車で行くしかない。駅前にはミニバス(バン)がいっぱい停車し、客引きも多い。サパまでは40km近くあり、車で1時間はかかるという。公共のバスはないのだろうか。

山岳少数民族の女性の姿も見える。同じベトナムでありながら、ハノイとは違う国に来たみたいだ。

最初に声をかけてきた女性と値段交渉し、駅にいちばん近いところに停車していた車に荷物を積み込む。しかし、この車に乗ったのはわずか3人で、運転手は発車する気配もない。
結局この後、列車が2回到着し、やっと満員になった。この間2時間待ち。夜はすっかり明けてしまった。

駅前を出発した車は、山道をひたすら上っていく。山の斜面を利用した棚田が眼下に見える。時折うすい靄の中を走るが、地上から見れば雲だろう。
車はやがて標高1600mの天空の町にたどり着いた。建物が見え始め、そこが終点サパだということがわかる。教会の前に停車し、全員がここで車を降りる。ホテルの前まで運んでくれると思ったのは甘かった。
ホテルの場所も方角もまったくわからないので、重い荷物を持ちながら、何度も人に尋ねて、やっと「HMONG SAPA HOTEL」にたどりついた。

モン・サパ・ホテル

これはモン・サパ・ホテル(HMONG SAPA HOTEL)でもらった名刺。車が止まった教会からは、さらに登り道になる。ホテルは断崖の上に建っていた。

朝の到着なので、予約してあった部屋が使えるのか心配だったが、すぐに用意してくれる。部屋にはバルコニーがあり、眺めがすばらしい。坂道を上ってきた値打ちがあった。

こうして、サパでの5日間がスタートした。


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