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「招かれざる客」1

Guess Who's Coming to Dinner

昔、こんな題名の映画があったっけ。邦題は「招かれざる客」。てっきり「Guess」ではなく「Guest」かと思ってた。

誰が夕食に来るのか、当ててみな。

やって来たのはシドニー・ポアチエ演ずる黒人青年。米国で異人種間結婚を禁じる州があった頃の話である。シドニー・ポアチエはなかなかの名優で、おいらのご主人は、高校生のころ、「夜の大捜査線」も見に行ったらしい。

ところで、このnote、映画の話をするわけじゃない。

 Guess Who's Coming to Me.
 誰がぼくのところに来ているのか、当ててみな。

おいらのことだ。
「招かれざる客」というぐらいだから、歓迎されていないのは確かだ。
でも、自分で言うのも変だが、来てしまったものは仕方がない。ご主人はかなり迷惑そうだが・・・。
ご主人が初めておいらのことをはっきり知ったのは、6月も1週間を過ぎた頃だった。ちょっと時間をさかのぼってみよう。


異変

おいらのご主人は、もと高校の教員だった。毎年職場で健康診断というものがあり、大きな病気一つしたことがない。昨年の春に現場を離れたので、今年4月には、自分で「人間ドック」なるものに行ったようだ。胃の内視鏡検査では、苦しさに涙が出たそうだが、結果はすべて「特に異常なし」ということで、安心していた。

そんなご主人が「異常」を感じ始めたのは、5月も終わり頃だった。実はおいらのせいなんだけど。
5月の下旬といえば、狛犬好きのご主人は、東住吉区の神社巡りをしたり、キース・ヘリング展を観にいったりしている。まだ元気だったんだ。でも左の脇腹辺りに違和感を感じていたらしい。
月末に奈良まで「空海展」を観に行ったようだが、この時はかなりしんどそうだった。
翌6月1日は小学生の孫たちの運動会。朝から小学校に向かうが、呼吸が苦しい。やっと深刻さに気づいて、かかりつけのクリニックで調べてもらった。エコー検査と胸部X線検査。左肺の下半分が白い!



 「肺に水が溜まってますね。」

顔なじみのU先生の言葉で、苦しさの原因は分かったものの、「なんで?」という疑問が残る。即座にS市民病院に精密検査の予約を入れてもらう。

こうして翌週から怒濤の検査が始まったのだ。

六月の肺は溺れて胸の波


検査始まる

週明け、ご主人は朝からS市民病院へ。明るくて気持ちのいい病院だ。この辺りは最近再開発されたばかりで、「健都」として生まれ変わった。市民病院だけでなく、国立循環器病研究センターもすぐ近くにある。



呼吸器リウマチ科のT先生の診察を受け、その後、採血・胸部X線・胸部CTと検査が続く。ここまでは、まだおいらの存在はわかっていない。極めつけは「左胸腔穿刺」。背中の左側から注射器で溜まった胸水を採取するのだ。もちろん麻酔をしてからだけど。検査といえども恐ろしい。この水の中に、おいらはいるのかな。

次の検査日は明後日になった。

翌日ご主人は、家でゴロゴロ。動くと呼吸が苦しいので、つい横になってしまうようだ。浅田次郎の『活動寫眞の女』を読んだり、テレビでスティーブ・マックイーンの「GET AWAY」を観たりしている。
おいらの存在をまだ知らないからか、のんきなものだ。(続く)






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