アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて②~
1日目はジャカルタまで
夏休みが始まり、ついにセラム島へ旅立つ日がやって来た。といっても、旅の第1日目は、インドネシアの首都ジャカルタどまりだ。
私と息子のYは大阪空港でM君と待ち合わせ、シンガポール航空SQ985便で、まずシンガポール・チャンギ国際空港に降り立った。シンガポール航空のアテンダント(客室乗務員~当時はスチュワーデスと呼んでいた)は颯爽としていて、民族衣装の「サロンケバヤ」を着用した美しさは、異国への旅に期待を抱かせてくれる。
早朝に家を出て、空港を発ったのが12時ジャストだったが、シンガポール着はもう夕方の5時だ。しかしこの日の旅はまだ終わらない。
ここからさらにSQ162便に乗り継いで、ジャカルタのスカルノ・ハッタ空港に着いたのが午後7時。日本との時差が2時間あるので、大阪空港からここまで9時間かかったことになる。エコノミークラスの飛行機での移動は疲れる。ジャカルタの空港には独特のにおいがある。自国の人にはわからないかもしれないが、インドネシアにやって来たと感じさせる甘いにおいだ。
「スカルノ」という空港名は、あのデヴィ夫人の夫であったインドネシアの初代大統領の名前である。「ハッタ」はその時の副大統領。外国に行くと、人名が通りや施設の名称になっていることが多い。町の名前になっていることもある。外国だから特に不自然に思わないけれど、これが日本ならきっとしっくりこないだろう。田中角栄空港とか佐藤栄作通りなんて、気持ちが悪い。もちろん安倍晋三広場なんて名付けてほしくない。
空港のシンガポール・エアラインのオフィスで、帰路の飛行機のリコンファームをすませた後、ジャカルタ市内の、SABANG METROPOLITAN HOTEL に移動する。移動手段は、空港前に駐まっているタクシーだ。声をかけてきた青年に連れられてブルーバード・タクシーに乗り込む。ブルーバードは、インドネシア最大のタクシー会社で、いちばん安心・・・なはず・・・。しかし、ホテルまで30,000Rp(ルピア)という契約で、メーターなど関係なしに、夜の道をぶっとばす。運転手は翌朝も空港まで送ると申し出たが、お断りした。
ホテルにチェックインしたのは夜の9時半。もうクタクタだったが、それでも3人は1時間後にはジャカルタの町にくり出した。
ねっとりと肌にまとわりつくような湿気が闇の中に溶け込んでいる。人通りはほとんどなく、車のヘッドライトの光がまぶしい。大通りから一筋中の道に入ると、いくつかのワルン(屋台)のまわりに数人ずつ人が集まっている。マクドナルドのある建物だけが煌々と灯りをまき散らしている。
歩き疲れてホテルにもどったのが11時半。日本時間では午前1時半になる。明日は朝早いので、シャワーを浴びて、さっさと眠ることにする。
長い一日がやっと終わる。
2日目アンボン島へ
翌日は、早朝 6:15 の飛行機に乗ることになっていた。wake up call を4時にしてくれるようにフロントに頼んであったが、3:50 に目が覚める。電話のベルがトゥルルルルと鳴る夢を見た。しばらくしてから目覚まし時計が間抜けな電子音をたて、続いて本物の wake up call が鳴る。受話器を取ると、無機的な女性の声が繰り返される。外は真っ暗だ。
4:10に、ホテルで頼んであったタクシーの運転手からも電話が入る。急いで用意をして、1階ロビーに下りる。ホテルへの支払いは昨夜のうちに済ませておいた。
今回のタクシー運転手のマナーは、昨日の100倍もよかった。料金は来たときと同じ30,000Rpだ。日本円に換算すると1,600円ぐらいかな。
空港で我々3人が搭乗したのは、国内線のメルパチ航空(Merpati Nusantara Airlines)だった。「merpati」は「ハト」という意味のインドネシア語だ。昨日乗ってきたシンガポール航空の飛行機と比べると、かなりローカル色が強い。
待機している飛行機まで歩き、タラップで機内に入る。
カメラマンは自分だから、写真にはほとんど写らない。
さて、ここからまた飛行機の乗り継ぎが始まる。乗客の中で日本人は我々だけだ。
ジャカルタ(Jakarta)からスラバヤ(Surabaya)まで飛び、さらにスラウェシ島のウジュンパンダン(Ujung Pandang)に移動する。ウジュンパンダンは、現在ではマカッサル(Makassar)と名前が変わっている。
スラウェシ島は、昔はセレベス島といった。数年前に家族4人でこの島のトラジャに行ったので、この空港は懐かしい場所だ。ウジュンパンダンとジャカルタの時差は2時間。今度は時計の針を進める。小さな空港で、待合室には時計も見当たらない。針を進めたり戻したりしていると、正しい時刻がわからなくなる。
乗り継ぎの飛行機を待つ間に、トラジャ・コーヒーと絵葉書を購入する。待合室は空調も悪く、とても暑い。
この日3度目のメルパチ航空の飛行機に乗って、いよいよ目的地のアンボン(Ambon)に向かう。予定より1時間遅れの離陸だ。アンボンの空港に到着したのは、午後3時半だった。
しかし空港はアンボン市内から36kmも離れているので、ここからもタクシーに乗る。たぶん現地の人が利用する乗り合いバスのようなものもあるのだろうが、不案内の旅行者には難しい。
タクシーに乗ってすぐに、帰りのメルパチ航空のリコンファームを忘れたことに気づく。日本の航空会社や外国の大きな航空会社の場合は、まず大丈夫だが、メルパチのような地元航空は、リコンファームをしておかないと心配だ。
タクシーは、PokaからGelalaまではフェリーに乗り込んで移動する。フェリー代金は2,000Rpと安い。どこを走っているのか皆目わからない。たぶん1時間ほど走ったあと、やや大きな町に到着する。ここがアンボンらしい。町中では、三輪自転車タクシーのベチャ(becak)が目立つ。タクシーは、我々が宿泊することになっているホテルの前で停止する。道路の前に、味気なくいきなりそびえている白いホテルだ。
「AMBOINA HOTEL」
運転手に料金17,500Rpを支払う。空港からアンボンの町までの定額らしい。荷物を下ろして、ホテルのフロントで部屋の交渉をする。3人部屋はないので、ツインの部屋にエキストラベッドを入れてもらうことにする。ボーイが汗をいっぱいかいて、大きなベッドを運び込んでくれた。部屋中ベッドだらけ、という感じだ。
時刻は午後5時過ぎ。暗くなる前に町を歩こうということになって、港の方角に向かう。マーケットがあり、にぎやかだ。屋台もいっぱい出ている。果物を売っている店でライチを買って食べる。
日本のたたき売りみたいなものや、長々と口上を述べて薬か何かを売る男もいる。大勢の人垣ができている。見ていて飽きることがない。いつの間にか日が暮れて、空が真っ暗になる。あっという間に2時間ほどが経った。
お腹が空いてきたので、ホテルの前を通り過ぎ、目に付いた食堂に入る。何を食べたのかよく覚えていないが、3人ともお腹いっぱいになった。支払ったのは 11,000Rp。600円ほどだ。ホテルに戻って、念のため正露丸をのんでおく。
昨日、今日と移動がほとんどの2日間で、さすがにくたびれた。早く眠りたい。
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