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アジア紀行~カンボジア・アンコール遺跡の旅⑨~


シェムリアップ4日目

朝6時半に目が覚める。昨夜はいつの間にか眠ってしまった。夜中に目覚めることもなく、久しぶりに十分に眠れたように思う。
バイタクのキーさんとの約束は8時なので、かなり余裕がある。レストランに下りて朝食にしようかと考えたが、あまり食欲がない。昨日マーケットで買ったバナナがテーブルの上にあったので、1本食べる。皮が薄くてむきにくい。
約束の8時にホテルの1階へ。キーさんは20分も遅れてやって来る。彼には何かと気に入らないことが多いが、別の人を探すのも面倒なので、とりあえず今日明日の2日間はまだ我慢しよう。しかしバンテアイ・スレイ(Banteay Srei)は遠いので、自動車をチャーターする方がいいかもしれない。

アンコール遺跡は広大だ。アンコール・ワット~アンコール・トム、そして昨日はプリヤ・カーン(Preah Khan)まで行ったが、今日はさらにその先まで行く予定だ。午前中に、ニャック・ポアン(Neak Pean)、東メボン(East Mebon)、プレ・ループ(Pre Rup)辺りを見学しようと思っている。アンコール・トムの東側をぐるっと回る感じだ。


出発

ホテルを出て、もう何度も通ったアンコール遺跡への道を北上する。空は曇っていて日差しは強くない。バイクに乗っていると、顔にあたる風が冷たく感じられる。雨が降らないか、心配だ。
キーさんは朝食がまだだと言うので、プリヤ・カーンの前にあった小さな食堂でバイクをとめる。その間、私は昨日見たこの寺院の光景を思い出しながら、参道の辺りをぶらぶらと歩いてみる。


ニャック・ポアン(Neak Pean)

「Neak Pean」が発音できない。Neakは「ニャック」だが、Peanが難しい。カタカナでは「ポアン」と書かれているが、地元の人の言葉は「ポン」に近い。それで「ニャック・ポン」と発音すると、それも違うと言われる。何度も言い直しをするが、よくわからない。茶店にいた子供たちが面白がって、「Neak Pean」と言えという。うまく発音できないので、笑われる。どうも遊ばれているようだ。

さて、その「Neak Pean」だが、クメール語で「絡み合う蛇」という意味だそうだ。北バライという貯水池の中心に作られた人工島にある。現在は雨季のはずだが、水は少なかった。
ここは12世紀後半、ジャヤーヴァルマン7世の時代に築かれた寺院遺跡だ。

ニャック・ポアンの祭壇

人工池の中心には円形の基壇が築かれ、その上に須弥山のような中央祠堂がある。基壇の周りを2匹の蛇が取り囲んで、西側で尾を絡ませている。「Neak Pean」という名前の由来だ。

ニャック・ポアンの中央祠堂
ニャック・ポアンの中央祠堂

中央祠堂のそばに神馬「バラーハ」の像が見える。観音菩薩の化身と言われている。
中央池の周辺には4つの池があり、それぞれが中央池とつながる所に水路となる小祠堂がある。ただしこの時は四方の池には水がなく、草が生えていた。
各祠堂に設けられた樋口には、四大獣であるゾウ、ライオン、ウマ、ウシが、それぞれ北、南、西、東の方向をつかさどる。実際は東だけはウシの代わりにヒトの頭部を表していて不気味である。

ニャック・ポアン東側 人頭の樋口

この時はそばまで行くことができたが、現在は保護のため近寄れないそうだ。

ニャック・ポアン見取り図(Wikipediaより)


東メボン(East Mebon)

続いて東メボンに向かう。この付近には、かつて「東バライ」と呼ばれる巨大な貯水池があった。東西7km、南北2kmもあったという。今では干上がってしまって、わからない。952年、ラージェンドラヴァルマン2世よって、この東バライの中央に造られた人工島に建設された寺院が「東メボン」である。

東メボン

東メボン入口

二重の周壁に囲まれた3層構造の基壇をもち、2層目の四隅には、巨大な象が寺院を守っている。

東メボン2層目の象

3層目には、5基の祠堂がそびえている。ここまで来ると、ほとんど観光客はいない。

東メボン中央祠堂
東メボン中央祠堂
基壇上部からの眺め

東メボンを出たあと、道路の反対側にある茶店で休憩する。前の道をひっきりなしに牛たちが通っていく。


キーさんが、バイクのタイヤがパンクしたので修理してくると言うので、この茶店でしばらく待つことになった。のどが渇いたのでコーラを買う。
店の女性が、日本語で「オニイサン」と近寄ってきて、絵はがきやスカーフやテーブルクロスや、さらにTシャツやバッグや・・・・・・店にあるものなら何でもすべて、次から次へと売りつけようとする。馴れ馴れしいが、退屈することはない。


プレ・ループ(Pre Rup)

次に向かったのは、プレ・ループ(Pre Rup)だ。東メボンのちょうど南1.5kmほどの場所にある。こちらもラージェンドラヴァルマン2世によって、961年に建立された。

プレ・ループ外観

プレ・ループの「プレ」は「変化」、「ループ」は「身体」という意味で、境内の石槽で火葬が行われたことに由来する。東塔門を入ったところに、その石槽があった。

火葬が行われたという石槽

正面の急な階段をのぼると中央祠堂に至る。四方にも4基の祠堂がある。

中央祠堂への階段

上層の基壇から四方を眺める。まずは正面側を振り返る。修復はまだまだこれからである。


寺院で遊んでいた子どもが、向こう側からアンコール・ワットが見えると教えてくれる。夕方には、沈む夕日とアンコール・ワットの両方が楽しめるという。遥か遠くまで、豊かなフィールドと森林が広がっている。アンコール・ワットはどこだろう。

遙かな眺め

見下ろすと、牛の背に乗る子どもの姿が見える。「平和」という言葉が心に浮かぶ。

牛の背に乗る子ども
教えてくれた子どもたち

祠堂の壁面を見ると、化粧漆喰を施したデバター像があった。これは創建当時のものだろうか。千年の微笑みをたたえている。

祠堂壁面のデバター像

いつまでも周囲を眺めていたい気にさせる寺院だが、いつの間にか太陽が真上に来ている。一旦ホテルに戻ることにする。
スラ・スラン(Srah Srang)という大きな池の横を通る。西側には、バンテアイ・クデイ(Banteay Kdei)という寺院がある。寄り道をしたい気持ちになるが、後日また機会があるだろう。

ホテルまで約30分で到着。午後は3時スタートの約束でキーさんと別れる。
朝ご飯をまともに食べていないので空腹だ。1階のレストランで食べたサンドウィッチが美味しかった。


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