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アジア紀行~カンボジア・アンコール遺跡の旅⑫~


バンテアイ・クデイ(Banteay Kdei)

午前中に訪れたバンテアイ・スレイ(Banteay Srei)の余韻を残したまま、Mr.キーの運転するバイクはもと来た道をアンコール・ワットの方角に進んでいく。


昨日そばを通ったスラ・スラン(Srah Srang)という大きな池までやって来た。西側には、バンテアイ・クデイ(Banteay Kdei)という寺院がある。昨日は通り過ぎたので、バイクを止めてもらう。


バンテアイ・クデイはバイヨン様式の大きな寺院だが、損傷が激しい。四面仏のある東塔門から内部に入る。シンハやナーガが守護している。


欄干のところに、幼い子どもが1人で遊んでいた。上半身は裸で裸足である。手に棒切れを持っている。


カメラを向けると無表情だが、別に怖がっている様子もない。あとを付いてくる。
この寺院は、ジャヤバルマン7世の治世中、12世紀後半から13世紀初頭に建造されたということだが、もはや崩壊寸前だ。あちこちでつっかえ棒やロープで応急処置を施してあるが、ひとたび地面が大きく揺れれば、ガラガラと音を立てて崩れることだろう。





仏像が安置されている部屋があった。周囲を飾り立てられ、供え物もある。廃墟寺院というわけではなく、今でも僧侶が出入りしているようだ。
ついてきた男の子に前に立ってもらって写真を撮る。表情がまったく変わらない不思議な子どもだ。持っていた飴玉をあげた時だけ、うれしそうにしていた。


時間をかければ、まだまだ見たいところがあるが、時計の針はもう1時を回っている。東塔門を出て、またスラ・スラン(Srah Srang)のほとりまで戻ってくる。

スラ・スラン(Srah Srang)

スラ・スランは、先ほどのバンテアイ・クディに付属する沐浴用の池だ。現在の大きさは東西 700m、南北300m。バンテアイ・クデイの入口の向かい側に、桟橋用のテラスがある。少年たちがここから池に飛び込んで遊んでいる。眺めていると、いろんな飛び込み方をしている。中には宙返りして飛び込むのを見せるから、1ドル寄こせとせがむ少年もいる。あきれるけれど、たくましい生活力かもしれない。


ここで一人旅をしているという日本人の青年と出会った。私と同じくタイからカンボジアに入ったという。このあとベトナム、中国と旅を続ける予定らしい。いつまで旅を続けるのかと尋ねると、お金がなくなったら日本に帰国するという答えが返ってきた。
気をつけて旅を楽しんでほしい。 Good Luck.

バイクのそばで待っているMr.キーのところに戻る。
「Eat?」と彼が言う。一日に何回もこの言葉を発する。
「Eat? No eat?」
よく言えば、私の空腹を気にかけてくれているのだろうが、ほかに話題はないのかと思う。それとも私をどこかの食堂に連れて行くことが、彼のメリットになるのだろうかと邪推してしまう。
今日は炎天下で長時間バイクに乗ったせいか、くたびれてしまった。早くホテルに戻りたいと伝える。

午後2時、ホテルに帰着。今日のアンコール見学はここまでにしよう。
「How about tomorrow?」と彼がきく。
ほんとうはゆっくり1人で過ごしたい気がするが、それももったいない。アンコール・ワットから見えていたプノン・バケン(Phnom Bakheng)にも登ってみたい。いろいろ考えて、明朝は8時半に約束する。

キーさんと別れてホテルの部屋に戻り、シャワー、洗髪。ついでに洗濯をする。一息ついたのは午後3時だ。さすがにお腹がすいてきたので、1階のレストランでバナナパンケーキを食べる。
その後は部屋でのんびり読書。ポール・リンゼイの『目撃』を読み終わる。著者は現職のFBI捜査官だそうだ。主人公のデヴリンと著者が重なる。旅の読書は気楽なものがいい。

いつの間にか日が暮れている。あまりお腹は空いていないが、おやつのようなパンケーキを食べただけなので、レストランに下りる。端のテーブルに、4人の若い日本人が熱心にメニューを見ている。今日はよく日本人に出会う日だ。若者はまだ学生らしい。坊主頭も茶髪もいる。コーラで乾杯をしている姿がかわいく見える。
春巻きとオムレツとアンコールビールを注文する。どれも美味しいのがありがたい。

少しテレビを観たあと、ベッドで今日一日のことを振り返る。いろんなことがたくさんありすぎたような気がする。バンテアイ・スレイの美しい彫刻を思い出す。Mr.キーのことを考えると、ちょっと嫌になる。あと2日、彼の世話になるしかないのか。
いろいろ考えていると、なかなか眠れない。普段は横になるとすぐに眠ってしまう性質なのに、旅という環境では眠り方も変わってしまう。時計の針がいつの間にか午前2時を指している。
灯りをすべて消して、もう一度横になる。
残りの旅を楽しもう!


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