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泉屋博古館 特別展「生誕150年記念 板谷波山の陶芸ー近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯ー」~展覧会#23~

板谷波山いたやはざん

少し前になりますが、京都市左京区鹿ケ谷にある泉屋博古館で、板谷波山の陶芸の展覧会を観ました。岡崎から泉屋博古館のある山手のほうへ、20分ほど歩きました。会期が10月23日までだったので、最終日間近の観覧でした。

陶芸家 板谷波山は、明治5年(1872)茨城県下館町(現・筑西市)に生まれ、昭和28年(1953)に陶芸家として初の文化勲章を受章した人です。
名前は知っていましたが、この人の作品をまとめて観たのは初めてでした。

板谷波山は、理想の作品づくりのためには一切の妥協を許さないという強い信念を持った人で、端正で格調高い作品を数多く手がけました。
今年令和4年(2022)は板谷波山の生誕150年にあたることから、泉屋博古館が所有する住友コレクションをはじめ、波山の選りすぐりの名作が一堂に集められました。

板谷波山の陶芸

展示室内は撮影禁止なので、板谷波山のすばらしい作品の写真を撮ることはできませんでした。会場でもらったチラシの写真で、いくつか紹介したいと思います。

この写真は「彩磁草花文花瓶」〈大正後期・廣澤美術館蔵〉です。不思議なほど柔らかな優しさを感じます。表面に薄い膜をはったような、それでいて透明感を失わない気品がありますね。

上段の左から2番目は「葆光彩磁珍果文花瓶」〈大正6年(1917)・泉屋博古館東京蔵〉です。
この花瓶はとても大きなもので、大正6年の第57回日本美術協会展で最高賞である一等賞金牌を受賞しました。名実ともに板谷波山が日本陶芸界の頂点に立ったことを示す記念碑的な作品で、重要文化財に指定されています。
見かけの色合いは、先の「彩磁草花文花瓶」と似ていますが、こちらは「葆光彩磁」と呼ばれています。「葆光彩磁」とは、板谷波山が創出した釉薬技法で、色ごとに防染剤で覆いながら液体顔料を定着させ、艶消しのマット調失透釉を掛けたものです。多彩な色彩で彩られた釉下文様が、淡いベールに包まれたようなうっすらとした光沢を放ち、独特の効果を発揮しています。

上段の右端は、「彩磁金魚文花瓶」〈明治44年(1911)頃 筑西市(神林コレクション)〉です。
波山の陶芸の特徴は、東洋の古陶磁がもつ洗練された造形に、19世紀末の欧米のアール・ヌーヴォースタイルを融合させたところにあると言われています。大胆な金魚の造形には、ユーモアを感じますね。

出品数はそれほど多くはありませんでしたが、伝統的な陶芸と新しい技術が融合した、ある意味完成した陶芸作品を堪能することができました。
日本の近代に、このようなすばらしい「陶芸アーティスト」がいたことを、決して忘れてはいけないと思いました。 

この展覧会「生誕150周年  板谷波山の陶芸ー近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯ー」は、本日11月3日から泉屋博古館東京に場所を移して開催されます。


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