招かれざる客2
正体現す
さて、前回はどこまで話したんだっけ。
そうそう、呼吸が苦しくなったご主人が、かかりつけ医の紹介で市民病院に行ったところだった。
採血・胸部X線・胸部CT・左胸腔穿刺と、怒濤の検査を受けて、やっとご主人は解放された。次の検査は2日後。
相変わらず呼吸が苦しく、胸も痛むようだ。
その日の午後、2回目の通院。検査は胸部から骨盤辺りまでのCTだが、今回は造影剤を入れて行う。ベッドに横になって血管に造影剤を注入する。
「一瞬からだが熱くなりますよ」
看護師さんの言葉通り、身体の奥で化学変化が起きている。
果たしておいらは写るんだろうか?
この日は、特に話もなく終了。次回はまた2日後。
そして金曜日。ご主人にとっては、1日おき3回目の病院通いだ。受付などの手続きにも慣れてきたようだ。
まず胸部X線検査から始まって、その後担当のT先生から話があった。
机の上のPCに、造影剤を使ったCT検査の画像が映し出される。所々に黒いボコボコしたものが見える。
「これはハイセンシュですね」
「Hi、選手」「敗戦手」
いやいや、そんな漢字じゃない。
「ステージⅣですよ」
なになに、そんな一気に進んでどうするんだ。なんにでも順番というものがあるだろう。
おいらも、ちょっとがっかり。あんな黒いボコボコがおいらのはずがない。もっと密かでスマートな存在なんだが。
ご主人は、まるで他人事のような顔をして先生の話を聞いている。そりゃそうだろうな。「青天の霹靂」って、こういうことを言うんだろう。
この後、遺伝子変異を調べるために、またまた「左胸腔穿刺」を行う。今回は、前回の倍の200ccを採取。見えないけど、どんな注射針が体内に刺さっているのだろう。肺膜までブスリと届く長い針を想像する。
この中においらはいるのかな。
ご主人は、この後心電図を撮って、病院内にある「患者支援センター」に行くように言われる。なんのことはない、入院に関する書類を渡され、来週詳しい説明をするという。
来週はまた大きな検査を2つする予定だ。入院はその翌週から。ご主人にとっては、なんだか人生の道筋を勝手につけられているようで不本意だが、ここはおとなしく従うしかないと、腹をくくっているようだ。(続く)
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