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都をどりは、ヨーイヤサー


人生初の「都をどり」へ

「五風十雨 ぼくの日常」に今回の記事を書き始めたのですが、「都をどり」を観るのは初体験。「日常」の中の「非日常」ですね。
たまたま手に入った「都をどり」のチケット。電話で予約を入れて座席を確保し、黄砂曇りの京都へ行ってきました。

最寄りの阪急京都線の駅まで、自転車を走らせます。1年ちょっと前まで、通勤で週2回は通っていた道ですが、久しぶりに走ると懐かしい気がしました。川沿いの道では八重桜がいかにも重そうな花をたっぷりと咲かせ、ハナミズキも開花しました。


今回予約をしたのは、12:30から始まる1回目の公演です。その前にお茶席があります。
終点の京都河原町駅に到着したのは10:45。すでに外国人観光客であふれる道を、鴨川に架かる四条大橋を渡って、八坂さんのある東へ向かいます。花見小路を南に下ると、ガラッと雰囲気が変わります。ここは祇園の中心地。お茶屋の家並みが建仁寺まで約1kmほど続きます。こちらも外国人観光客がいっぱいです。石畳の道は自動車も乗り入れるので、ぼんやりと歩いていられません。



祇園甲部歌舞練場

午前11時、祇園甲部歌舞練場に到着。お茶席は11時半からなのでまだ早いと思っていたら、中に入ると、右奥の建物の前にもうすでに列ができていました。



この右奥の建物は「八坂倶楽部」といいます。窓口で公演の座席券と交換して、急いで列の後ろにつきます。11:15頃から入場が始まりました。過去の都をどりのポスター原画や今回の衣裳などの展示物を見ながらお茶席に向かいます。

左:秋野不矩 右:三輪良平
2024年ポスター原画 諫山宝樹

ズラリと何列も並べられた長机の前の椅子に、これまたズラリと客が並んで座ります。めいめいの前に皿が配られ、とらやの饅頭がその上に載せられます。桜の焼き印と「におい」が施された「春の日和」という和菓子です。そのあと、お茶が出されます。裏方ではせっせと大量のお茶を用意しているのですね。右隣には若い外国人のカップルがいて、お菓子とお茶を交互に楽しんでいます。まあ、お作法なんてどうでもいいか。お皿はそのまま持ち帰ることができます。


お茶席が解散になった後は、しばし庭園の散策。桜の季節がもう過ぎたのが残念です。



都をどり

そしていよいよ歌舞練場に移動します。開演まであと15分。私の席は〈6-2〉。前から6列目の左から2番目です。歌舞練場には両端に花道があるのですが、左側の花道のすぐそばです。花道の上には囃子方の席があります。




写真撮影ができたのは開演前だけ。祇園甲部歌舞練場は、都をどりの専用劇場として明治5年(1872)に開設されました。その後、大正2年(1913)に現在地に移転し、平成28年(2016)からは耐震工事のために休館となり、昨年やっと完了したところです。

12:30、いつの間にかすべての座席がいっぱいになっています。照明が暗くなり、いよいよ都をどりの開演です。
左後方から「みやこおどりは、ヨーイヤサー」という華やいだ声がしたかと思うと、縹色はなだいろの衣裳を着た舞妓さんたちが登場しました。まさにポスターから抜け出たかのような華やかさです。


今回の「都をどり」は150回目となる記念公演で、テーマは「都をどり百五十回源氏物語舞扇」です。演目は次の通り。

第1景・・・置歌(銀襖)
第2景・・・多賀大社(多賀大社梅花香)
第3景・・・五条辺(夕顔垣根納涼)
第4景・・・葵上御殿(葵上)
第5景・・・須磨ノ浦・明石の浜(須磨明石)
第6景・・・大原野神社(大原野神社紅葉彩)
第7景・・・雪の川辺(雪景色鷺舞)
第8景・・・祇園甲部歌舞練場(歌舞練場桜揃)

「源氏物語」の有名な場面を中心に、途切れることなく舞台が進行し、同時に季節が移り変わっていきます。この間、一度も幕が下りません。


何しろ、花道のすぐそばですから、囃子方の笛も鼓も、そして演ずる舞妓さんの表情もよく見えます。花道から登場する人の姿も間近です。
今回あらためて感心したのは、みなさんよく練習をされているということです。一人ではなく揃って踊るには、全員のが一致してなくてはいけません。それがみごとに揃って流れていくのです。顔の表情を変えず、視線を保つのも難しいでしょうね。
そして何よりも、舞妓さんがかわいい。特に目尻の紅がなんとも愛らしいですね。

1時間の公演は、あっという間に最終景の「歌舞練場桜揃」になってしまいました。第3景から第6景までの「源氏物語」の場面は、登場人物の喜怒哀楽を表現した踊りでしたが、やはり大勢が踊る場面が華やかでいいすね。最終景で、全員が満開の桜の下で舞う姿は圧巻です。宝塚ではありませんが、都をどりの固定ファンが多いだろうことは容易に想像できます。
最後の幕が下り、照明が灯ると、ため息のようなものが会場に漂ったような気がしました。
しばらくして振り返ると、大勢の観客が退場していきます。


会場の外に出ると、2回目の公演を観にやって来た人たちでいっぱいです。観光バスで訪れる団体客もいるようです。外国人観光客も目立ちます。彼らはどんな印象を持ったでしょうね。

帰路は建仁寺を通り抜けて、遠回りして河原町まで出ました。建仁寺の桜ももうお終いですね。




何歳になっても、初めての経験というのはあるものです。今日はそれを一つ付け加えたよい一日でした。

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