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アジア紀行~インドネシア・幻の巨大チョウを求めて⑤~

セラム島の朝

旅に出て5日目。セラム島での最初の朝がやってきた。
マソヒ(Masohi)の町のホテル(ゲストハウス)のダブルベッドで目覚める。隣に眠っているのは息子のY。
外は雨が降っているようだ。気持ちが重くなる。
Yを起こすと、彼はすぐにトイレに行った。昨日からお腹の調子が悪そうだ。
7時過ぎにM君とガイドもいっしょに簡単な朝食。そのあと、部屋のバスルームでマンデイ。「マンディ」というのは、インドネシア語で「水浴び」という意味だ。水槽にためてある水をプラスチックの手桶で頭や体にかける。

ツアー会社の「MANUSELA TOUR」の予定表によると、本日の行程は次のようになっている。

朝食後に車でセラム島北岸のサカ(Saka)まで移動し、その後、スピードボートをチャーターしてワハイ(Wahai)まで行くことになっている。ハワイかと思ったら「ワハイ」だった!

サカ(Saka)へ

8時ちょうどにマソヒのホテルを出発。車は、昨日アマハイの港からここまで乗ってきたミニバスだ。ドライバー以外にも現地の人らしい人が2人乗っている。村を過ぎると山道に入る。途中で舗装もなくなりガタガタ道になる。よく揺れる。
雨はほとんど止んだ。途中一度だけ休憩になり、ホッとする。車から降りて、谷の向こうの、雲がかかった山並を眺める。なかなか素晴らしいパノラマだ。いま自分がいる場所も、かなり標高の高いところだろう。

みんなで記念撮影。右から2人目がガイドのジャニスだ。左の2人はミニバスの同乗者。私はカメラマン。

ちょうど2時間のドライブでサカ(Saka)に到着。サカは小さな港町だ。M君は少し車酔いしたらしい。かなり揺れたものね。
ボートが準備されるまで、港の食堂で待機する。日本人が珍しいのか、人が大勢寄ってくる。いっしょに写真を撮ってほしいという。店の中から手招きして、入ってこいという。カメラを構えると、走ってくる人もいる。たいした人気者だ。

M君は完全に元気を取り戻したようだ。みんなに囲まれて楽しそうに話をしている。お姉さんに囲まれたときは、特にうれしそう! おじいさんにも気に入られたみたい。

お茶をのんだ店のチャーミングな女性が、写真を送ってほしいと言って、住所を書いて渡してきた。

スピードボート

50分ほどたって、やっとボートの用意ができたようだ。スピードボートと聞いていたので、いわゆる「モーターボート」を想像していたが、まったく当てが外れてしまった。我々が乗ることになったボートは、木製の船に、わずかに屋根と船外機を取り付けた漁船だった。

乗船してまずしたことは、船底にたまった水を手製のバケツでかき出す作業。その後、それぞれ居場所を定める。モーターが大きな音を立てて動き出す。いよいよ出発だ。
「スピードボート」という呼び名はどうかと思うが、水の上を走り出すと、これがけっこう快適だ。
船は椰子の立ち並ぶ海岸線を右手に見ながら走る。

波が静かなので、気持ちよく水を切って進む。雨模様だった空もいつの間にか晴れて、ギラギラした熱帯の太陽が肌を焼いていく。2人はシャツの袖を肩までめくりあげている。しかし、この無防備があとでどんな災いをもたらすかは、だれも分かっていなかった。

船の進行方向の左手には大洋が広がる。時折小島があるが、あっという間に過ぎ去って行く。大海原の彼方は水平線だ。わずかだが、中央が盛り上がって見える。「地球は丸い」と実感する。

それにしても、この船の旅は、いろんな自然を見せてくれた。
刻々と表情を変える入道雲。何度も海面から跳躍するカジキマグロ。水面を滑空するトビウオ。尻尾で海面を小刻みに打ちながら直立して進む銀鱗は何という魚だったのか。海面の浮遊物に羽を休める鳥たちもいた。

スピードボートでの船旅は4時間続いた。軽いやけどのような日焼けとお尻の痛さを残したが、ほんとうに楽しかった。

そしてついに、今夜からの宿泊地、ワハイ(Wahai)の港に到着。港といっても、小さな突堤があるだけだ。荷物を持って船から降り、突堤の階段まで海の中を歩く。膝下までの海水は温かい。


ワハイでのお話は次回にします。


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