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アジア紀行~インドネシア・タナトラジャ~サバイバル家族旅行note⑦~
TOKARAUへ
前回の「トラジャ4日目の朝」の続きです。
日本に連絡がとれて、帰りの飛行機便の確保に少し光明が見えてきた。2日後に再度電話をするということで、それまでこちらでは、なす術がない。
ガイドのGENTOが運転する車は、彼の友人のKIYUDINさんと私を乗せて、いよいよ葬儀が行われるTOKARAUへと向かった。
TOKARAUはRANTE PAOの北にある村で、道路はほとんど舗装されていない。ガタガタ道を30分ほど走る。道の右側を川がつかず離れずで流れている。
到着した広場には、すでにたくさんの車がとまっている。「RAMAYANA TOUR」と書かれたバスもある。トラジャの葬儀が観光化されている証拠だ。
車を降りてセレモニーが行われるところまで、さらに15分ほど歩く。道はぬかるんでいて、スニーカーが泥だらけになる。見ると、GENTOは長靴を履いていて、KIYUDINさんは地下足袋だ。
葬儀の会場はかなり高い場所にある。眼下には緑が溢れ、その上には青い空と白い雲。パノラマがひらける。
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やっと到着した葬儀場には、すでに大勢の人々が集まっていた。広場を囲むように観覧席が作られ、2~300人はいそうだ。親族や村人以外に、外国人のツーリストと思われる人々の姿も見える。
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観覧席の反対側にも仮設のトンコナンハウスが建てられ、2階に祭壇が設えられている。
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棺桶が二つ並べられている。今回の葬儀の喪主である PUANG SIKA さんの子供たちだそうだ。ガイドのGENTOに案内されて、PUANG SIKA さんに挨拶をし、お悔やみを言ってお供えのタバコを渡す。日本語だから通じてはいないだろうが・・・。
喪主はもちろん、家族や親族は黒いシャツと黒いサロン(腰巻き)を着ている。
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喪主にお供えを渡したことにより、我々は賓客扱いになった。大勢がひしめく観客席ではなく、親族や村の有力者が集まっている建物の席に案内される。
儀式が行われるのはすぐ目の前だ。葬儀は、マイクを持った進行係によって進められる。
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葬儀始まる
10時頃、ハンドスピーカーの声が場内に響く。いよいよ葬儀の始まりだ。いや、葬儀自体はすでに始まっているのだろう。今から繰り広げられるのは、葬儀のクライマックスといえる水牛の生け贄である。広場の一角には何頭もの水牛たちがつながれている。
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一頭の立派な水牛が広場の真ん中に連れて来られ、地面に打ち込まれた杭につながれる。杭につながれた綱の一方は、牛の前足にくくりつけられている。
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一人の男が、左の手で牛の頭をおさえて鼻に通した紐を持ち上げ、右手で腰の刀を振り上げるやいなや、牛の喉元を目がけて一撃を加える。喉元から赤い血が吹き出る。牛は前脚を折ってひざまずき、ドッと地面に倒れて横たわる。男は自慢げに右手を高々と上げる。
屠り役の男が入れ替わり、次々と牛を引き出しては犠牲にする。
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喉を刀で打ち切られた牛は、いったい何が起こったのかわからないという表情で、うつろな目を虚空にさまよわせる。しかしそれも一瞬のことだ。
しかし、中には前脚を踏ん張って立ち続ける牛がいる。必死に人間に対して、そして死に対して抵抗しているように見える。
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振り返ると、サロンで顔を隠すようにして涙ぐんでいる男の子がいた。この子がかわいがっていた牛なのかもしれない。男の子はすぐに建物の下に隠れてしまった。
牛が地上に倒れると、竹筒を持った若者や少年が数人駆けよって、赤い血が噴き出す喉元にその竹筒を差し入れる。牛の血は貴重な食料なのだ。
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すぐ目の前で、凄絶な光景が繰り返される。いや神聖な光景なのか。
こうして10頭以上の牛が目の前で次々に倒されていった。屠られた牛は、尻尾を切り落とされ、皮を剥がれ、そして解体されていく。
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呼吸するのも忘れるほどの濃密な時間が過ぎていった。長いのか短いのかもわからなかった。時計を見ると、間もなく正午になる。ハンドスピーカーを持った男の人が何か言っている。牛を屠る儀式が終わったことを報告しているようだ。緊張感がふっと緩む。
外国人のツーリストが席を立ち帰り始める。しばらくすると、外国人はたぶん自分一人になった。しかしまだ儀式は続いているようだ。
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