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気持ちに蓋をしてがんばり続けた結果、育犬ノイローゼに

柴の子犬を迎え入れてからもうすぐ2ヶ月が経過する。
月齢はもうすぐで4か月。
現在の私の素直な心境としては、常に胸に重いものがつかえているようで、朝が来るたび憂鬱な気分で日々を過ごしている。

トラウマの対象が生活の中心にあるという、常にストレスに晒された状況。身体的な変化としては、治ったと思っていた夜中に何度も目が覚める中途覚醒の再発と、食欲が緩やかに落ちてきたという自覚症状がある。

「飼う前は不安だけど、いざ飼い始めたら、犬のいない生活はとても考えられない、かけがえのない家族のような存在になる」という話を近しい人から聞いたりもしていたが、少なくとも今の私には全く当て嵌まらない。

仮に、もしも誰かから「子犬を譲ってほしい」と申し出があったとすれば、いまの私はその申し出をありがたく受け入れてしまうだろう。
ただし、家族の手前、とくに今回犬を飼いたいと熱望していた次女と妻からの反対に合い、現実的には選ぶことのできない選択だということは目に見えてはいるのだけど、それほどに追い詰められてた気分になっている。

そう、私は犬を飼う資格のない人間だったのだ。
それと同時に、楽しそうに犬を飼っている人に対して心から尊敬の念を抱くようになった。

犬に対して苦手意識のある私は、「ふとした拍子に危険な攻撃行動をとる動物」という認識だ。
そのような認識であるが故に、これから先、家族が怖い思いや大怪我をしないよう、先回りして犬の本能からくる攻撃行動を未然に防ぐことで常に頭の中が一杯になっていた。

このような不安から、子犬の躾や身の回りの世話の大半を私が担当することになっていった。

出先では常にペットカメラで子犬の様子をチェックし、購入した柴犬の飼育本を何度も読み返し、ドッグトレーナーがやっているYouTube動画を見たり、ネット記事を読み漁ったり、それらの中で有効に感じたものを取り入れて試行錯誤していた。
不安を抱えた状態でじっとしていられるようなメンタルの強さを持ち合わせていないため、何かしらをアクションを起こさないと落ちつかないのだ。

しかし努力の甲斐は無く、当の子犬はといえば、こちらが最も懸念していた行動のひとつである食べ物に対する執着、いわゆるフードアグレッシブ的な行動が目立ち始めてきた。

子犬を迎えた当初からずっとやっていた、食事中の皿に手をいれてかき混ぜるというのをフードアグレッシブの予防策(昔、妻の実家で飼っていた犬にやったら有効だったということで)として、朝晩の食事の度にずっとやっていたのだけど、これがNG行為であったと後から知る事になる。

つい先日、いつもの様に私が子犬の目の前に座り込んで食事を与えていたところ、次女がその様子を覗きこんだ途端、次女に対してもの凄い剣幕で威嚇し、噛みつきそうな勢いて吠え立てた。

これは以前にコングにフードを詰めて与えた時、それを触ろうとしたときに守って威嚇してきた時と同じような吠え方だった。

普段、食事の大半は私が与えていたため、他の家族からも食べ物がもらえると学習すれば大丈夫かと思ったのと、次女自身も慣れさせたいと本人が希望したため、私が普段やっているのと同じ手順でやらせてみたところ、食べ終わりの皿の底に指入れた瞬間、子犬はブチ切れて次女の腕に噛みついてしまった。
すかさず私が割って入り、皿を取りあげてその場を収めたのだけど、甘噛みを殆どしなくなって喜んでいた矢先の出来事だったので、ショックは大きかった。
幸い大した怪我にはならなかったけど(犬歯が二本刺さり、僅かに血が滲んではいた)、これが成犬の本気咬みだったらと想像するとゾッとした。

よくよく調べると、このようなかつて正しいとされた躾の方法は、最新の研究では、余計にフードアグレッシブを起こすきっかけになってしまうと知る。
自分の無知のせいで娘に怖い思いをさせてしまい、本当に落ち込んだ出来事だった。

とりあえず今は、柴犬の飼育本に書いてあった、手から直接フードを食べさせるという方法をとっているが(皿を守るという悩み自体発生しないため)、これから先もずっと手でやり続けていて、果たしてそれで良いものだろうか?根本的な解決は出来ていないのでは?と思い悩んだりもしている。

現に、食べ物以外のおもちゃにも「守り」の行動が見られ始め、それに関しての対策はまだ何も打てていない状況である。

また、先日は予防接種のついでに獣医さんに爪切りもお願いしたところ、もの凄く嫌がっていたので途中で断念し、「柴は繊維な子が多いんですよね…、全部切れなくてすみません」と獣医さんに謝られてしまった(前回は嫌がりつつも切れたけど、今回は悲鳴を上げたため)。
これを無理やり切り続けると咬みついてくるんだろうなという不安を覚えつつ、動物病院を後にした。

とにかく、なってほしくないと願っていた状態へとどんどん近づいていっているような状況である。先のことを考えると不安しかない。
ただし、妻と二人の娘たちが深刻に捉えておらず、このように悩んでいる私の事を時には白い目で見ていたりして、結構な温度差を感じる。

きっと妻たちの方が正常なんだろう。なぜなら私は自他ともに認める育犬ノイローゼなのだから。

子犬に接する時、表面上はとても可愛がっているが、それは褒める躾の一環であり、周囲の人間に対しての演技でもあり、そして「自分は犬を好きになれる」という自己暗示の為のものである。

そんななか、胸の奥では無理やり抑え込んでいた感情が、ついに溢れ出してしまった。


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