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米不足から米過剰、再び食料不足の時代に

昨年12月22日、国立社会保障・人口問題研究所より、2050年に秋田県の人口が56万人となり、2020年と比べた人口減少率が全国最大の41.6%(39万人減)になると発表されました。
秋田県の65歳以上の高齢化率は、49.9%で全国最高であり、年少人口(0歳から14歳)割合は6.9%、生産年齢人口(15歳から64歳)割合は43.2%と、いずれも全国最低で、人口減少と少子高齢化が、ますます進むことになると言われております。

また昨年の12月27日、農水省より農業基本法改正案の骨子が発表されましたが、農水省によると、今後20年間で、基幹的農業従事者(一家で農業の中心になっている人)は、現在の約4分の1(約120万人から30万人)に減少することが見込まれ、従来の生産方針を前提とした農業生産では、農業の継続的な発展や食料の安定供給はできなくなると言われております。

国は、世界の人口増、戦争、温暖化等、食料の安定供給を巡る課題に対応するため、食料安全保障の強化を農業基本法改正の柱と位置付けるとのことです。
また、農業者人口が減少する中でも、生産水準を維持するため、農地の基盤整備と農業機械の自動化を促進し、農業技術伝承のため、国の研究機関である農研機構の技術を農業者に配信するための、スマート農業の導入も促進するとのことです。

私が大潟村に入植した54年前は、米不足に対応するため、米の増産運動に取り組み、一粒でも多くの米を収穫できるよう、全国の先進地農家に研修に行きました。
増産運動の効果があり、大潟村に入植した時から、米を減産する減反政策が始まりましたが、今度は、食料不足に対応するため、食料安全保障強化の政策が発表されました。

私は、大潟村入植者の中では一番若かったので、米不足から米過剰の時代を経験し、再び、食料不足の時代を迎えることになりました。
国が進めようとしている食料安全保障政策にかかる様々な取り組みについては、私もその通りだと考えており、私なりに地域の農業者と連携し、一人でも多くの農業者が、農業を継続できるようにしたいと考えております。
しかしながら、農業者の離農速度が速く、国が進めようとしている農地の基盤整備や農業のスマート化が、間に合わないのではないかと心配しているところです。

協会を訪問される農業者の皆様には、これからは個々に設備投資をするのではなく、地域全体で農業法人を創り、地域の農業者が一体となって地域農業を守ることを勧めております。
そうは言っても、個々の農業者は、私が話したことにすぐに対応することはできませんが、それでも、協会を訪問される方には、必ず、そのように話をさせて頂いております。

国も話しているように、二十年後に基幹的農業従事者が4分の1に減少することになると、日本農業は、国民食料の安定供給ができなくなるので、そのようにならないためにも、私にできることに全力で取り組みたいと、決意を新たにしているところです。

令和6年2月
大潟村あきたこまち生産者協会
涌井 徹