見出し画像

「コロナ混乱期」の今こそ、幕末維新の愛読書『西国立志編』を読むべきだ。

 今、日本を取り巻く環境は、幕末維新とよく似ていると思う。
1853年、黒船が浦賀に来航してから、日本の「当たり前」は大きく変わってしまった。
 大政奉還、王政復古の大号令、江戸から東京への改称、廃藩置県…
政治は幕藩体制から天皇統一国家に変わり、徳川幕府が没落。
産業は、列強諸国の脅威をバネに、鉄道、郵便、電話といった西洋技術を取り入れ産業革命を起こした。文化も人の生活も大きく変わった。
「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」というフレーズも時代を象徴するものとなった。

 2020年2月上旬、東洋経済オンラインでこのような記事が掲載された。
この記事では、平成と大正の大正時代の類似性について述べており、その記事の中でこのような言葉がある。

#大震災の発生やバブル景気後の長期不況など個々の事象が似ているというより 、歴史の流れに類似性があると思います。幕末維新の「混乱期」、明治の「発展期」を過ごして大正は「安定期」。昭和以降は、太平洋戦争と戦後しばらくが混乱期、高度成長が発展期で、平成が安定期です。

 時代が令和になり、日本はまた、「混乱期」を迎えようとしている。時代を「混乱期」へと導いたのは、黒船でも、ペリーでもない。新型コロナウイルスである。

 中国の湖北省武漢市で最初の症例が発生して以来、中国全土に感染が広がり、記事を書いている、2020年4月25日時点では、212カ国の地域に渡り、感染者数は2,790,986人、死者195,920人となっている。日本でも感染者数12,863人、死者345人と日に日に感染者数は急増している。
世界の経済は、2009年のリーマンショック以上の不況とも言われており、国際通貨基金(IMF)では、1930年代の世界恐慌以来で最悪の経済危機に直面するとの見通しを示している。世界中で外出自粛が呼びかけられており、「Stay Home」が叫ばれるようになり、それまで進んでいなかったテレワークも日本で急速に進み始めた。
 また、この情勢の中、3月25日より各通信会社で次世代移動通信「5G」のサービスも開始された。人々の生活を一変させる可能性を持つ5Gや今回のコロナウイルスにより、10年も経たないうちに、政治も、経済も全てが変わってしまった幕末維新のような大変革が、近い将来、起きるのではないだろうか。 

 時代が変動していった明治初期、多くの若者から支持された本があった。
福澤諭吉の『学問のすゝめ』と同じようにベストセラーとなった『西国立志編』である。 この本は、1859年にサミュエル・スマイルズが『自助論(Self-Help)』として発行し、1871年に当時幕府の留学生だった中村正直が「西国立志編」として日本で翻訳刊行した。欧米史上有名な300人あまりの成功談を紹介しながら独立自尊の精神を広めたものである。

明治時代のバイブルとされたこの本には、「混乱期」を生きる、私たちにも力を与えてくれる言葉が多く記載されていた。今回は、『自助論』(改訂版)の中にでてきた現代にも通じるポイントを各章ごとに、簡単に紹介する

1.〈自助の精神〉人生は自分の手でしか開けない

自分の幸福や成功については、自分自身で責任を持たなければいけない
大切なことは、一生懸命働いて節制に努め、人生の目的をまじめに追求していくことだ。骨身を惜しまず学び働く以外に、自分を磨き、知性を向上させ、ビジネスに成功する道はない。

2.〈忍耐〉逆境の中でこそ、若芽は強く伸びる

どんなに逆境であっても、希望を失ってはいけない。希望を失った人間は、人間性まで堕落してしまう。最大限の努力を払ってでも、勤勉の習慣を身につけなくてはいけない。それさえできれば何事においても進歩や上達は目に見えて速くなるだろう。

3.〈好機、再び来らず〉人生の転機を見抜く才覚、生かす才覚

心は目と同じくらい立派にものごとを見通せる。思慮の浅い人には何も見えなくても、聡明な洞察力を身につけた人間は、目の前の事物に深く立ち入り、その奥に横たわる真理にまで到達できる。虎視眈眈とチャンスを狙い、機敏に捉えて実行に踏み出すことが大切である。

4.〈仕事〉向上意欲の前にカベはない

いかなる境遇にあろうと、勤勉によって天賦の才をさらに磨き続けれていれば、自らを守る力は必ず与えられる。成功を決意し、努力の結果に自信を持つこと。

5.〈意思と活力〉自分の使命に燃えて生きる

どんな分野であれ、成功に必要なのは秀でた才能ではなく、決意だ。あくまで精一杯努力しようとする意思の力である。活力によって人は行動を起こし、精魂こめた努力を開始する。活力に裏付けられて初めて真の希望、つまり人生にほんとうの香りを添えてくれる希望が芽生える。

6.〈時間の知恵〉「実務能力」のない者に成功者なし

どんなビジネスでも、効率よく運営するのに欠かせない原則が六つある。
それは、「注意力」「勤勉」「正確さ」「手際の良さ」「時間厳守」「迅速さ」である。この六つの原則は、人間が世の役にたち幸福や繁栄を得るには極めて大切な意味をもっている。時間の持つ意味を正しく理解すれば、行動もおのずと機敏になる。時間は、使い方が悪いと一文の価値もないが、うまく使えば必ず幸運をもたらす。

7.〈金の知恵〉楽をするには汗をかけ

人は誰でも分相応の暮らしをするよう工夫しなければならない。
人生の最高の目的は、人格を強く鍛え上げ、可能な限り心身を発展向上させて行くことである。これこそ唯一の目標であり、それ以外のものはこのための手段に過ぎない。最高の快楽や富、権力、地位、栄誉や名声を得たとしても、それは人生における最大の成功ではない。

8.〈自己修養〉最高の知的素養は一日の仕事から生まれる

勉強が精神を鍛えるように、労働は肉体を鍛える。知識の価値とは、どれだけ蓄えたかではなく正しい目的のためにどれだけ活用できるかにある。
人間は、勉強量や読んだ本の冊数で賢くなるのではない。勉強法が自分の追求する目的に適しているか、一心不乱に勉強に取り組んでいるか、勤勉が習慣となっているかが大切である。実践的な知恵は、自己修養と克己心を通じてのみ得られる。

9.〈すばらしい出会い〉人生の師・人生の友・人生の書

人格教育の成否は、誰を模範にするかによって決まる。我々の人格は、周囲の人間の性格や態度、習慣、意見などによって、無意識のうちに形作られる。良い規則も役には立つが、良い模範にははるかに及ばない。

10.〈人間の器量〉人間は一生通用する唯一の宝だ

立派な人格とは、人生の最も気高い宝である。人格はそれ自体が優れた身分であり、世間の信用を勝ち取れる財産だ。社会的な地位がどうであれ、立派な人格者はそれだけで尊敬を受ける。
真の人格者は、ちょっとしたふるまいにも他人に対する気配りが行き届き、相手が対等な立場であろうと目下の者であろうと、その気配りは変わらない。また、自分より恵まれない境遇にいる人の弱さや失敗の過ちには寛大な心で接しようとする。富や力や才能に奢らず、成功しても有頂天にならず、失敗にもそれほど落胆しない。他人に自説を無理に押し付けず、求められた時だけ自分の考えを堂々と披露する。人の役に立とうという場合でも、恩着せがましいそぶりは微塵もみせない。

いかがだっただろうか。
150年以上前に刊行された著作であるが、2020年を生きる私たちにも通じる教訓が多く書かれていた。
今、混乱期を生きる私たちは幕末維新で動乱期を乗り切った若者達と同じように、
自分たちが主体となって新しい時代を巻き起こすことが必要になるのではないだろうか。
『Stay Home 』でお家にいる今のあなたにオススメしたい一冊である。

https://www.amazon.co.jp/自助論-知的生きかた文庫-S-スマイルズ-ebook/dp/B0099JL73W




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?