黄昏の橋を渡れない男_29

アキラは準備を始める。自分をやめる準備。
この人生をリタイヤする準備だ。
身の回りの整理をしながら、自分自身の気持ちも整理し始める。
死ぬ前の自分が、ここ数か月で生き生きしている矛盾が滑稽に思えた。
家族はもちろん、周囲にも悟られないように。ただただ静かに準備を整える。
アキラは、最後に手紙を書くことにした。
こんな自分に優しくしてくれた両親。
長年付き合ってくれた友人たち。
信頼している医師。
そして最後まで向き合うことができなかった妻へ。
便箋に自分自身の申し訳なさと、感謝の気持ちを綴った。

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