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次世代の医学教育のかたち 1/n

東京どまんなか4.0で
講演者として発表してまいりました。

その備忘録をここに残しておこうと思います。

きっかけ

東京どまんなかの運営メンバーの初回打ち合わせで
「楽しい会」
「RPG抗菌薬YouTube動画のようなテイストで」
という敷居の高い(いい意味で)オーダーがあり

「お、おう」みたいなトーンで
その期待に応えるにはどうしたらいいか?
ということを考え始めました。

「医学教育×Gamification」が
最近の探求テーマではあるので
楽しみながら取り組めそうな予感がしていました。

このシリーズは、
東京どまんなかのプレゼンテーションに
どのような工夫を散らばせたのか
という舞台裏を記していきます。


1年次から6年次のフルレンジ対応をどうするか

参加者はありがたいことに
医学部医学科1年次から6年次まで
広い範囲の学年分部でした。

もちろんレクチャーをする側にとっては
かなりの難易度ではありますが、
個人的には学年ごっちゃ混ぜの
カオスな会が好みなので、
これも楽しく企画することができた要因です。

参加者の学年が異なるということは
背景知識の差が大きいということなので
同じ内容を伝えたとしても
受け取り方に大きな違いが生じるのです。

これは講演者の立場としては
クリアすべき大きな障壁となります。

対応方法は自分の知る限りでは2つあって、
どちらもスモールグループディスカッションが
その学年間のミスマッチを解消してくれます。

参加者の学年が異なる場合の工夫(例)

①1グループ内に各学年が存在するように分配する
これは屋根瓦方式を狙っています。
少し上の年次が下の年次をフォローし、
知識や考え方を伝授するという構造です。
こうすると、下の年次は上の年次から
ためになることを教わることができるので
取り残されずに会に参加することができます。

ただし、この方法の欠点は
下の年次への説明を前提としているので
時間が余剰にかかってしまうということです。
時間的な余裕があれば、
各学年間の交流も出来るというメリットがあり
良い相互作用が期待できます。

②1グループを単一学年で構成させる
これは背景知識のレベルの差を
なるべく均一化させることを意図しています。
同じレベルで話が出来るので
変な焦燥感や劣等感は抱きにくいのが特徴です。
また同じ年次ということもあり、
気兼ねなく話しやすくなるという利点が生まれます。

ただ、単純にディスカッションしただけでは
その成果が年次によって異なりますので
ディスカッション後にグループの代表者が
何を話してどのような結論に至ったのか
ということをフロア全体に発表してもらうことで
年次ごとのアウトカムのグラデーションが
参加者全員に共有されることになります。

①②どちらにしても
参加者の満足度は高くなる傾向にあります。
バックグラウンドによるハンディキャップの差を
どのように埋めるのか?
ここに知恵をはたらかせるのは
やりがいもありますし、
何よりやってて私は楽しいところです。


zoom開催かつ多人数という前提で講じた策とは

さて、今回の東京どまんなかでは
zoom meetingのツールが採用されます。
参加者の規模は100名以上とのことです。
ブレイクアウトルームという機能があるので
スモールグループディスカッションも
やる気になれば出来なくはないのですが、
クリアすべき課題が煩雑すぎて
事前の打ち合わせの段階で断念しています。
困ったものです。


そこで考えたのが、
total 10問の出題を通じて
参加者の年次によって目標値を変化させる
というアイディアでした。

題材は外傷診療の医師国家試験過去問なので
レベル的には5,6年次〜初期研修相当の内容です。
その年次層には8〜9割の正答率を期待して、
まだ臨床の内容に触れていない1-3年次には
「どんなに間違えても良い」という
セフティネットを張ることにしました。

流石に、全部間違えて良いという設定だと
緊張感が無くなってしまうので、
5択のマルチプルチョイス問題の性質を踏まえて
10問あれば、2問は確率論的に正解できると期待して
目標を3~4問に設定しました。

個別(集団別)の目標設定によって
高年次の参加者は「間違えられない」という緊張感
低年次の参加者は「1問でも正解させたい」という意欲が
生じてくれることを意図しています。

(つづく)