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国際協力×スポーツの可能性ー国際協力ゼミレポート

みなさん、こんにちは!

オンラインサロン「国際協力サロン」では、「国際協力ゼミ」という勉強会を定期的に開催しています。今回は、「国際協力×スポーツ」をテーマに勉強会を行ったので、その内容の一部を皆さんにご紹介させていただきます。

今回は、「国際協力×スポーツ」の分野でさまざまな方面から活動に取り組む5名の方にお話をしていただきました。

登壇者紹介

遠藤さん:協力隊員としてボリビアにてサッカー隊員として活動。大学時代にもボリビアでボランティアとして活動した。

金森さん:JICA南スーダン事務所勤務。企画調査員として活動。スポーツを通じた平和促進のプロジェクトを運営している。

坂口さん:日本スポーツ振興センターにて海外との連携を促進する業務に従事。フィジーでのスポーツ政策策定に携わっている。

林さん:協力隊でセネガルに派遣予定。陸上競技経験者。大学時代にカンボジアとケニアにて体育の質改善プログラムに従事。

増澤さん:協力隊としてカンボジアに派遣予定。大学時代からスポーツを通じた国際協力に携わってきた。

● テーマ:スポーツの可能性

司会広木)みなさま今日はよろしくお願いします!ではまず、スポーツを通して何が変わったのか、逆に何が変わらなかったのか、そういった可能性について教えて下さい。

林さん)ケニアで子どもたちがボール一つを取り合う様子を見たとき、規律の面で教育がされていないことを感じました。そこでチームワークを重視した指導を行ってみたところ、子どもたちが順番を守るようになりました。スポーツには規律を育む効果があるのだと思いました。

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林さん

遠藤さん)ボリビアで似た経験がありました。コーチでさえ時間を守らなかったり……なので、僕自身が姿勢で示すことを意識していたら、だんだん時間を守ってもらえるようになったり、片付けをしてくれるようになりました。

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遠藤さん

金森さん)南スーダンの野球チームでも、礼儀やルールについてしっかり指導したところ、次第に覚えてくれるようになった経験があります。少しずつ礼儀や片付け、ルールの遵守が身についていきました。また、途上国にはちゃんとしたコーチがいないことがよくあります。なので、「教えてもらえること」自体が嬉しいように見えたりしました。

広木「教えてもらえること自体が嬉しい」という視点は面白いですね。勉強ができない子がスポーツで力を発揮するような場面はありましたか?

金森さん)そうだと思います。あとは、野球のようにルールが少し難しいスポーツでも、その楽しさに気付いてからは、少し難しい話も頑張ってついてきてくれるようになったことがありました。スポーツを通じて集中力を身に着けてくれたんだと思います。タンザニアやガーナでは、スポーツを通じて学校の成績が上がった例がありました。やり抜く力がついたケースと言えそうです。

増澤さん)規律に関しては、自分がインターンをしていたカンボジアのサッカークラブでは、選手たちが練習時間をしっかり守っていましたね。そこで活動していた日本出身の選手は「このクラブは他と違う。子どもたちの見本になるために、時間を守る意識がある」と言っていたそうです。他のクラブでは「練習や試合の時間を守らないのが当たり前」だそうで。時間はかかりますが、少しずつ変われるのだと思います。

また自分のいたボランティア先では「勉強も家事も頑張るからサッカーをやらせて欲しい」という子どもたちがいました。

広木)なるほど。スポーツがインセンティブになるんですね。

坂口さん)インセンティブになるというのは、本当にそう思います。フィジーでは、犯罪率の高いとあるエリアにバスケットコートができたところ、その地域から代表選手が出てくるようになりました。すると悪名高かったエリアが、「バスケットボールが有名なエリア」として生まれ変わったんです。子どもたちが時間やエネルギーをスポーツに費やせるようになったことは、犯罪から抜け出すパワーになりました。

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坂口さん

一方で難しいと思うのは、「スポーツはある程度フォーマットが決まっていること」です。開発領域では課題に対して直接的な解決策を考える事ができますが、スポーツでは課題と手段が一致しないこともあったりして、模索中です。

金森さん)未だに部族衝突が残る南スーダンでは、「異なる部族同士もスポーツを通じて繋がり合える」と知ってもらえるような活動をしています。実際、選手たちの平和意識が高まったり、それを個人のコミュニティに還元しようとする意識が見られました。一方でそれが本当に平和に直接寄与しているかを見るのはなかなか難しいので、ここからそこを証明していきたいと思っています。

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金森さん

ところで、自分は紛争解決の手段としてスポーツを使っていますが、みなさんはスポーツの振興か、課題に対する手段としてのスポーツか、どちらをやりたいと考えていますか?

坂口さん)私は元々バスケをやっていたので入り口は純粋なスポーツでした。今は両輪でやっていきたいと思っています。

遠藤さん)自分もやってきたことは純粋なサッカー指導でした。今後は課題解決のアプローチとして、スポーツ以外の手段も学んでいきたいと考えています。

林さん)自分もスポーツからですね。ケニアで運動神経の良い子どもたちにたくさん出会ったのですが、指導する人材や環境の面で不足を感じました。だからこそ自分は指導者として働いていたのですが、今は手段としてのスポーツにも関心を抱いていますし、開発とうまく掛け合わされば面白いんじゃないかなあと思います。

増澤さん)自分もずっとサッカーをやってきて、サッカー指導をメインに行っていました。様々な活動の中で「プロスポーツ選手になりたい」という子どもたちが多かったです。しかし、本当にプロになれるのはごく一部だからこそ、スポーツをツールとして捉える考え方が、社会課題解決のためには有効かも知れないと思いました。

たとえば技術的な育成だけではなくて、規律などの面でも彼らが周囲の子どもたちの見本になれるような育成が素敵だと思っています。

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増澤さん

広木)なるほど。お話を伺っていて、スポーツと開発の掛け合わせの可能性をすごく感じました。

増澤さん)異なる分野のコラボに関して、Sports for Tomorrowの例が面白いです。公式サイトに様々な活動レポートが紹介されているのですが、それぞれのプロジェクトがSDGsのどの項目に関係しているかまとめられているんです。

金森さん)スポーツ×HIV啓発の例はよくありますね。例えばケニアやジンバブエでは、運動しながら衛生啓発を行っている例があります。南スーダンでは、エボラ啓発とスポーツ、という例があります。スポーツは人を集めることが可能なので、啓発との相性がいいんです

とはいえ、スポーツ自体の振興も大切にしたいですね。その国から有名なプレイヤーが出ることは、ロールモデル育成の観点で大事なことです。あと例えばサッカーの本田選手は、貧しい子供にサッカー指導や、職業訓練を施したりしています。どちらの視点も大事だと思います。

広木)スポーツ振興・技術向上も、課題解決にフォーカスした他領域とのコラボも、どちらにも可能性がありますね。

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以上、先日行われた勉強会前半のレポートでした!

勉強会後半では、「スポーツプロジェクトのインパクト評価」についてお話を聞きました。

国際協力サロンでは、このように定期的にテーマを設けて勉強会をオンラインで開催しています。国際協力サロンで一緒に勉強したいという方のご参加、ぜひお待ちしております!

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