石に羽が生えたなら

  ルードヴィヒの余韻やケンジトシの当落に悲喜交々な中、なんとなく石子と羽男のことについて書いておきたくなったので心赴くままに打ってます。

  石子と羽男は名作ドラマを数多く生み出してるTBS金曜22時枠で、アンナチュラルやMIU404などの傑作ドラマを作られてきた新井プロデューサー×塚原演出の最新作。しかも主演は役者として素晴らしい有村架純と中村倫也。もう発表された時からドラマオタクとして楽しみにしていました。

  放送されて結果的に私の想像を軽々と飛び越えるような名作で(なぜか中村さんのファンにまでなってしまったのは計算外だったけど)2022年の夏を色鮮やかな季節にしてくれました。

  好きになった点も見所もたくさん数えきれないほどあるけれど、私はやっぱり石田硝子と羽根岡佳男という二人が大好きでした。最初は二人のロマンスも少しは期待していたけれど、終わってみれば相棒としてお互いの隣に立っている今の関係性がベストだなと思います。というか、二人が大好きなので相棒でも恋人でも親友でも、お互いに納得して並んでいてさえくれればなんでもいいやって感じです。

  意外と二人もそうなんじゃないかなって気がします。二人って正反対なように見えて根っこはとてもよく似てる気がする。困ってる人のために傘を差し出したい優しい気質とそれができる能力を兼ね備えてる。でもトラウマやコンプレックスが邪魔をしてしまいうまく発揮できない。一歩前へ踏み出せない。そんな燻ってる状況の時に二人は出会った。でも自分とよく似てる相手だと本能的に察知して、それが鏡で自分を見るみたいで嫌になって反発し合ったのかなと。

  でも一緒にいる内に少しずつ見え始めていって、自分を許すように相手を受け入れ始めていって。隣にいることが心地よくなってきて、いつしかそこにいたいと望み始めた。その時に運命の歯車が噛み合えば相棒以外の関係性になる未来もあったかもしれない(実際には企画当初、二人が恋人になるという設定もあったらしい)でもお互いが恋愛対象としては惹かれる前に、石子ちゃんには純粋に慕ってくれる大庭くんがいた。その手を取ることを羽男さんが優しく背中を押して、石子ちゃんも大庭くんを選んだ。

  この辺の流れが他のドラマとは一線を画していて、色んなところから評価されたり支持を受けた理由かなと思います。

  石子ちゃんと羽男さんの話に戻すと、二人は相棒としてお互いを認める以前に、まずは相手の隣にいたいっていう言葉にできない不確かな望みがあって。恋人という選択肢はなくなった以上、他の関係性を模索したらそこに仕事上の相棒という形があった。それならば相手の隣にいられる、堂々と立っていられる。だから二人はその形に収まっていったのかなと。

  まあほぼほぼ妄想というか、考察という名のこじつけかもですが 笑 そう考えると二人の間にある時には相棒以上にも思える言葉のやり取り(最終話でカツ丼食べながらのプロポーズ紛いの言葉とか)も自分なりに納得できるなと思った次第です。

  あと石田祥子と羽根岡佳男っていう名前のバランスも良いなって思います。トラウマが石のような重しになって歩き出さないでいた石子ちゃんに、羽男さんが文字通り羽を授けて前へ進ませてあげた。逆に羽が震えてうまく飛べなかった羽男さんに、石子ちゃんが宝石のような安心を与えることで軽やかに動き出せるようになった。名前からして二人の出会いは運命だったんだなあって勝手に感極まってます。

 羽が生えた彼女と羽を自由に使いこなせるようになった彼。二人は今も爆食の街を飛ぶように駆け抜けて、心優しき人々のために弁護士として働いてるんだろなって想像すると嬉しくなります。願わくばいつかその姿を再び目にできる日が来ますように。

 長い真夜中のラブレターのような文章、お読みくださりありがとうございました!


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