【無料】 天才だと勘違いしていた
自分のことを天才だと思っていた。
世界一、面白いと思っていた。
大阪に出てきて直ぐ、吉本興業の大恩人社員さんのお陰で、初めて漫才台本の発注を頂いた。
しかも、のりよしさんの漫才で、特番でテレビ放送されるという。
二か月くらいかけて必死に書いた漫才台本が、初見の読み合わせで、アドリブ全開、一気に膨らんだ。
膨らんだというか、私の考えたボケやツッコミは、粉々になって吹き飛んだ。消え去った。でも面白かった。何これと思った。
芸人さんに発想では勝てない、とその瞬間に悟った。
目の前に大きな爆弾が落ちたような感じ。
悔しくもなかった。
勘違いに気付いてから数秒で、自分は筋を考えよう、と決心した。
演者が活きる、そんな漫才台本が書きたい、と。
生き残る術だった。
その半年後、中川家の漫才のお手伝いを始めた頃は、2人が一番良い状態になるよう、それだけを考えて、台本にまとめた。
そして、2年後に、M-1グランプリが始まった。
あれから、様々な芸人さんと関わってきた。
天才だと勘違いしてこの仕事に就いたが、作家も芸人も、自信と思い込みが必要だと思う。どの仕事もきっとそうなのだろう。
壁にぶつかってピリピリしている期待の若手漫才師と、先程30分ほど電話して、色んなことが頭を巡った。
お互い様、お陰様、長く続けてほしい。
善は急げ🏃♀️