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【国宝語り】中国地方の国宝

中国地方の国宝は数はそれほど多くありませんが、個性的な優品が多いです。
まず、建築も所蔵する宝物も国宝に指定されている厳島神社(広島県)です。建築は遠浅の海に面して造られており、満潮時は床下まで海水が上がってきます。

厳島神社
厳島神社・干潮時

厳島神社に奉納された鎧や刀剣類が数点国宝に指定されています。中でも平家納経は平清盛が奉納した写経で、装飾が豪華でいつ見ても見飽きない素晴らしいものです。ただ、残念ながら、建築以外の国宝は厳島神社を訪れても見られる機会は少なく、私は厳島神社ではなく、博物館の展示で見ました。

神社ということでは古式ゆかしい出雲大社の本殿と同じ様式で建てられている神魂神社(島根県)も他ではなかなか見られない建築で印象的でした。

神魂神社

三仏寺投入堂(鳥取県)もまた唯一無二の建築です。建築様式というより崖にへばりつくように建てられた姿が忘れられません。近くまで登っていくことは可能ですが、麓に遙拝所がありますので、登らなくても遠くから眺めることもできます。

遙拝所から投入堂を眺める


建築以外では、毛利博物館(山口県)所蔵の雪舟の四季山水図が印象に残っています。雪舟の代表作で、その16mという長さから山水長巻とも呼ばれています。雪舟の展覧会が各地で行われていて、そこに貸し出されることも多いのですが、毛利博物館では年に1度、部分ではなく全場面を展示しますのでお勧めです。

博物館が作られた毛利氏邸宅にある庭園

今は瀬戸内市(岡山県)が所蔵している「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」は、刃文が特に美しく、今まで見た刀剣で一番気に入っています。備前長船刀剣博物館で年に1度くらいの頻度で展示されています。

荒神谷遺跡出土品と加茂岩倉遺跡出土銅鐸は文化庁の所有になっていますが、どちらも島根県の遺跡から出土しました。現在は島根県立古代出雲歴史博物館で保管、展示されています。大量の銅剣や銅鐸が展示されている光景は圧巻です。

荒神谷遺跡出土品
加茂岩倉遺跡出土銅鐸

最後に、建築の中でも仏塔が一番好きな私がお伝えしたいのは、国宝の五重塔、三重塔、多宝塔が全て揃っている都道府県は全国でも広島県だけということです。奈良でも京都でもないんです。

明王院五重塔
向上寺三重塔
浄土寺多宝塔

中国地方は東京からでは遠く、交通の便も決していいとは言えませんが、それぞれの地域の歴史や文化に根差した、印象に残る国宝が多いと思います。


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