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トリカゴ【読書記録#2】

主人公は、2歳の子どもを持つ警察官の女性。
警察官になったきっかけは、幼少期にテレビで見た、とある事件。

「鳥籠(とりかご)事件」。

当時、幼い兄妹が、マンションの部屋の一室でろくに養育もされないまま生かされていた。部屋にはペットの鳥がいて、時々母親が食事を運んでくる。いわゆるネグレクト。監禁状態。
警察が踏み込んだ時には、部屋には鳥の死骸とともに、野生児のような2人の姿があった。
2人は無事に保護され、児童養護施設に預けられる。しかし、その後すぐに、2人は失踪してしまう。カウンセラーになりすました何者かが、2人を誘拐し、連れ去ってしまったのだった。2人の行方は、未だに行方不明になっている。

こんな痛ましい事件が2度と起きないように、と思い、警察官になった主人公。

ある日、殺人未遂事件の容疑者として、ある女性の事情聴取をすることになった。しかし、話がすすまない。名前も住所も年齢も、答えられないのである。嘘をついているわけではなく、女性の様子からしても、どうやら本当のようだった。

彼女は、「無戸籍」の女性だった。関わっていくうちに、彼女が例の「鳥籠事件」と関係があるのではないか、と考えるようになる主人公。

こんな感じのお話です。

私たちには、当たり前のように名前があり、住所があります。
自分の親は誰で、家族は何人いて、毎年誕生日が来れば何歳になった、と数えることができますよね。
それが自分でわかるのは、親だったり周りの人に教えてもらっているから。
そして、その証明になっているのが、「戸籍」。

でも、戸籍を持たなかったり、持てなかったりする人たちも確かに存在しているのです。

無戸籍の人を支援したい、と思ったある人物が、町の中で「無戸籍の人を知りませんか」と声かけを行うシーンがあります。
当人は「無戸籍の人を助けたい」という一心で活動していたのに、肝心の対象者には、「自分が無戸籍だと知られてしまったら、捕まるかもしれない」と思い、両者は触れ合う機会を逃すのです。

無知は弱さなんだな、と思いました。

いくら世の中に頼れる制度があっても、それを知らなければ、活用することができません。
いくら、「行政の支援があります」と言っても、本人がそれを知らなければ意味がないのです。

無戸籍について、知らないことばかりでした。
新しい法ができて、とか、制度ができて、とか。
そもそもきちんと「無戸籍」について理解できていなかったです。

参考文献に無戸籍関係の書籍が載っていたので、作者の辻堂ゆめさんもいろいろ見て、知って書かれたのだろうなと思います。

今回は取り上げられていたのは無戸籍の人々でしたが、それに限ったことではないなと思いました。

たとえばコロナの給付金。生活支援制度。介護の補助金。

知らない制度はたくさんあるような気がします。そして、活用できていない人もきっといるのではと思います。

困ったとき、誰を、またはどこに頼ればいいのか、ピンチの求め方を知っておかないといけないな、と思いました。

さて、ここまで無戸籍の人々にスポットライトを当ててお話してきましたが、一方でミステリーとしての物語、問題解決も必読です。

「鳥籠事件」とどのように絡まり、帰結するのか。

衝撃、納得のラストでした。最後まで見逃せません。
読みごたえがありました。

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