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KokugoNote #22高1国語総合

続き。

○その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
与謝野晶子(1878‐1942)

 注目しているのは「黒髪」ですね。どのような?「櫛にながるる」から判るように、「長い、つややかな黒髪」であることが想像できます。
女性の美しさを表現するひとつが「長い髪」という価値観がありました。お正月の百人一首でも、平安朝の女性は皆、ロングヘアでしたね。ショートヘアにすることがファッションの一部として憧れを抱かれるようになったのは、昭和初期モダンガール(モガ)がその走りだとされています。基本的には、女性らしさの象徴としての「長い黒髪」と捉えて良いと思います。
 この歌も、その美しさを賛美しているのですが、「二十歳の女性」「長い黒髪」「うつくしい」という要素はよく詠まれるところですが、与謝野晶子さんの独特な表現は、そこに「おごりの」という言葉を盛り込んだことです。

 今、勉強している『平家物語』などでは、「盛者必衰」「おごれる者も久しからず」と否定的に語られる表現ですが、与謝野晶子さんは「おごり」をプラスの意味で捉えています。
 誇らしい「その子=ここでは作者自身のこと」のうつくしさを自ら称(たた)えるという表現です。「春が満開であるのと同じように、私も20歳の美しさも絶頂にありますよ、どうです??」という主張は当時の人々を大いに驚かせたことだと思います。
最近、問題視されている日本の若者の「自己肯定感の低さ」とは裏腹に、びっくり自画自賛です。自己承認を誰かに求めるのではなく、自分で誇りに思っているから大丈夫だというのは頼もしい限りです。皆さんはどうでしょう?自分のプラス面に目を向けることができていますか?

 歌を鑑賞するときは、自分ならこのようなお題を与えられたときにどのように表現するだろう?と考えることです。女性・美しい・春というワードから何を連想するか?どういう心情を詠もうと考えるか?そういう視点から、様々な短歌を較べると、表現・価値観の違いを知ることができますよ。

『国語便覧』318頁を参照のこと。

キーワード:与謝野鉄幹・雑誌『明星』・『みだれ髪』・詩『君死にたまふこと勿(なか)れ』〔*日露戦争出征中の弟に向けて〕・『源氏物語』現代語訳


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